デジモン 中編・長編
□6.悲劇に触れて
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大は二日間目を覚まさず、三日目に意識を取り戻した。
「マサル…大丈夫か?どこか悪いところとか…」
「んなとこねぇよ」
「本当か?我慢してるんじゃ…」
「しつけぇ!!」
起きてからずっとこの調子だ。ヒカリは今昼飯を作っており、太一が大に付き添っている。
「心配し過ぎなんだよ。大丈夫っつったら大丈夫なんだよ」
「けど…」
「…大丈夫だ。俺は丈夫だからな!」
ニッと笑う大。安心させようとそうやって笑っているのだが、太一の心配を逆に煽る。
(違う…俺が言ってるのは体の方じゃ無くて心だ…)
最初から体の方はたいした怪我はしていなかった。だが、あの時の様子からして、心は相当な傷を負っているだろう。
(俺を見ている目が以前と違う………また…"アイツ"を見てるんだ…)
"アイツ"…トーマの事だ。あのロストの出現の時も今も、大は太一とトーマを重ねている。何故なのかは太一にも分からない。だが、重ねて見ているのは分かった。
(なんで"俺"を見てくれないんだよ…)
見ているのに、それは自分では無く他の男。それが妙に腹立たしい。布団をギュッと握り締める。
「太一」
「!」
名前を不意に呼ばれると正直な心は高鳴る。顔をあげると、眉を下げいている大。
「お前こそ体大丈夫か?あの時スゲェ苦しそうだったけど………悪かったな…」
(あ………そうだ…俺越しにアイツを見ていても、仲間を傷付けた事にマサルは傷付いてるんだ………俺は自分の事ばかりしか考えて無い…)
自分の気持ちだけで手一杯な自分に嫌気がさす。
因みに太一は昨日の夜まで、腹の痛みが続いていた。臓器などがやられている訳では無かったので、大事には至らなかったが、相当な痛みだった。
「大丈夫だ。痛かったっちゃ痛かったけど…あの時言っただろ。あの痛みがお前を元に戻すきっかけになればへっちゃらだって」
「…バカヤロー…んな事言ってたらその内俺に殺されっぞ」
「はは…本望だな」
「アホか!!」
「イダッ…!」
笑って言う太一の頭にチョップをかます大。勿論加減はしている。と言うか互いが最近まで病人だったのもあるからだが。
「マサルさん体調はどお?少しは良くなった?」
「おう!あたぼうよぉ!もとから元気なんだし、飯食ったら余計元気になったぜ!!」
「フフ…良かった!」
大の元気な姿にヒカリは安心する。
ヒカリが持ってきたご飯を食べた大。三日間近く何も食べずに眠っていたせいで余程お腹が空いているようで、それを予想したヒカリが持って来たおにぎりやら卵焼きやらを物凄い勢いで食いつくした。
「いや〜…それにしても食い過ぎたな。腹いっぱいだわ…」
「腹膨らんでるぞ。妊婦か、お前は」
「子供は男が良いなぁ!」
(妊婦のところを突っ込めよ……あ、コイツ男女関係無しでキスすれば出来るとか思ってたんだった)
まだ見ぬ大の父親にいろんな意味で溜め息を吐く。