Novel〜biyori〜
□妹曽じゃおんどりゃあああぁぁぁぁぁっ‼︎
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「感情が高ぶると涙腺が緩くなるんですよ」
「…え、どういうことですか?」
以前の会話が蘇る。あの時も曽良は突然何の前触れもなく涙を流していた。初めて見る曽良の様子に動揺する妹子に、しかし曽良は普段と少しも変わらない冷静な口調と声の調子と表情で、そのギャップが更に妹子を戸惑わせた。
「気にしなくて構いませんよ」
「いや、気にするなっていう方が無理ですよ‼︎」
「大体」
ため息混じりに曽良が言う。目を細め、心底呆れた表情。
「妹子さんがこんな話題を振らなければ、涙を流すことも無かったんですよ?」
「そ、それは…」
何か、すみませんでした。
妹子が目を伏せて謝ると曽良は、ふんと鼻であしらうようにして目を逸らした。
しかし、あの時自分が何を言ったのか、妹子はまるで思い出せないのだ。それでも、自分の発言によって曽良が普段から望んでいる心の平穏を乱したということだけは理解出来た。