小説来い!!

□ある日の話。
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「いい朝ですねえ」
ある朝、島左近は寝起きに外を見ていった。
スズメが飛び、空には雲一つない。
なんとなく気分がよくなり、城内を歩いていた。

「島様!」
突然呼ばれて振り向けば、三成の小姓だった。
「はい?なんでしょう?」
「実は・・・」


三成が起きて来ない。
というか、起きてはいるが姿を見せないのだという。
心配なので様子を見てほしい、ということだが・・・
「殿。」
「!左近か。・・・なんだ?」
「いえね、起きてはいるのに姿を見せないものだから心配で・・・様子を見に。」
何かを考えているような間があり、三成は返事を返した。
「左近・・・俺の体はおかしいのだよ。」
「おかしい?」
三成の声は今にも泣きそうだった。
「俺はこの先、どうすればいいのだ?どうすれば・・・」
震える声で、三成は問う。
「殿?何があったんです、殿!」
ついに耐え切れなくなり左近はふすまに手をかける。
「開けるな!!」
途端、鋭い声が飛んできて、左近は思わず身を固めた。
「開けるな、左近・・・頼むから、開けないでくれ・・・!」
「殿・・・本当に、何があったんですか?言ってください、殿!」
思わず声を張り上げる。
「左近・・・俺はもうお前の顔を見ることなどできん・・・惨めだ。俺は・・・」
三成の声が嗚咽交じりのものに変わる。
もう限界だった。

パァン!!

左近は一気にふすまを開け、室内に入った。
ピシャリと後ろ手に閉じ、三成と向かい合う。

三成は布団にくるまって泣いていた。
左近は、この男がこのように泣いているのを初めて見た。
「左近、開けるなと・・・」
「いいかげんにしてください!」
三成の体がビクンとはねた。
「殿、本当に、どうしたんです?言ってくださるまで、部屋をでませんよ。」
厳しい声で左近が告げると、三成はすがるような目を向けた。
「俺は・・・」
左近はじっと次の言葉をまった。
しばらくして、やっとの思いで三成は口を開いた。
「体が、おかしいのだよ」
そういって布団を剥ぎ取り、自分の胸元をはだけてみせた。
丸いふくらみがそこにはあった。
「殿・・・それは・・・」
「わからないのだ、なにも!起きたらこのような体になっていた。」
左近はそっと三成の襟元をただし、笑いかけた。
「どんな姿になっても殿は殿です。左近は、そのようなことで
あなたから離れやしませんよ」
「左近・・・」

三成は泣き出した。
しかし、悲しいのではなく、嬉しかった。

左近の腕の中に抱かれる。
暖かかった。


そのぬくもりが、三成をとても幸せな気持ちにさせた。

つくづく、この男がいてよかったと思う。



願わくばこの瞬間が永遠に続きますよう・・・。


そう願って、三成は、静かに目を閉じた。

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