D.Gray-man長編

□マテールの亡霊<前編>
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「古代都市 マテール」
今はもう無人化したこの町に亡霊が棲んでいる。

亡霊はかつてのマテールの住人。
町を捨て移住していった仲間達を怨み、その顔は恐ろしく醜やか。
孤独を癒すため町に近づいた子供を引きずり込むと云う。




「あの」

私たちは、電車に飛び乗るため、疾風のごとく駆けていた。

「ちょっとひとつ わかんないことがあるんですけど…」
「それより今は汽車だ!!」
「お急ぎください。汽車がまいりました」

探索部隊が私たちに声をかける。

「でええっ!?これに乗るんですか!」
『うんそう。気をつけてね、アレン』
「はいっ。ってレンさん!?何に乗ってるんですか!?」
『ん?ああ、これ私のイノセンスだよ』
「なるほど…」

アレンたちがバッと飛び降りる。
私も天神扇に乗って汽車へと急いだ。


ダン!という破壊音をたて、私以外の三人は汽車に飛び乗った。
私も続いて天神扇から汽車へ飛び移る。

「飛び乗り乗車…」
「いつものことでございます」

アレンの呟きに探索部隊が冷静にそう告げた。


「困りますお客様!」

乗務員が心底困った顔で私たちを見上げる。

「こちらは上級車両でございまして、一般のお客様は二等車両の方に…。てゆうかそんな所から」
「黒の教団です。一室用意してください」

乗務員の言葉を遮って探索部隊がそう言う。

「! 黒の…!?
か かしこまりました!」

乗務員がユウの胸元のローズクロスを見て頭を下げ、走っていく。

「何です今の?」
『私たちの胸にあるローズクロスはバチカンの名において、あらゆる場所の入場が認められてるのよ』
「へえ」

アレンの素朴な疑問に答えてあげると、アレンは珍しそうにローズクロスを見つめた。

「私は今回マテールまでお供する探索部隊のトマ。ヨロシクお願いいたします」
『よろしく、トマ』
「よろしくお願いします」




上級部屋の中で私たちは資料に目を通していた。
横にはユウ、前にはアレン…といった状態だ。

「で さっきの質問なんですけど」

アレンがユウに声をかける。質問というのは汽車に乗る前に言っていたものだと思う。

「何でこの奇怪伝説とイノセンスが関係あるんですか?」

顔に「めんどくせ…」と書いてあるユウは、舌打ちをすると、イノセンスについて話しはじめた。
でも、なんだかんだ言ってちゃんと教えてあげるユウは、やっぱり優しいと思う。
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