D.Gray-man長編
□マテールの亡霊<後編>
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『地下通路?』
私が背負っていた少女が口を開き地下通路の存在を教えてくれた。
「この町には強い日差しから逃れるための地下住居があるの。あのアクマという化物は空を飛ぶ…、地下に隠れた方がいいよ」
『そっか…ありがとう』
ユウが少女をちらっと見て建物から飛び降りる。
私もそれに続く。
ジリリリリン!
そのとき、ユウの襟元から着信音が鳴り無線ゴーレムが飛び出す。
「トマか。そっちはどうなった?」
《別の廃屋から伺っておりましたが、先ほど激しい衝撃があってウォーカー殿の安否は不明です》
『アレン…』
一人残していった彼が気掛かりで仕方ない。
《あ、今アクマだけ屋内から出てきました。ゴーレムを襲っています》
「わかった。今俺のゴーレムを案内役に向かわせるから、ティムだけ連れてこっちへ来い。今はティムキャンピーの特殊機能が必要だ」
《はい》
ユウが無線を切り、ゴーレムをトマのもとへと向かわせる。
「さて それじゃ地下に入るが道は知ってるんだろうな?」
「知って…いる。私は…ここに五百年いる。知らぬ道は無い」
そう言って男性が帽子を外す。隠れていた顔があらわになり、その容姿に私は息をのんだ。
ユウも軽く目を見開いている。
「くく…醜いだろう…」
「お前が人形か?話せるとは驚きだな」
「そうだ…、お前達は私の心臓を奪いに来たのだろう」
「できれば今すぐ頂きたい」
少女が目を見開き、人形の前に立ち塞がる。
「ち 地下の道はグゾルしか知らない!グゾルがいないと迷うだけだよ!」
「お前は何なんだ?」
「私は…グゾルの…」
「人間に捨てられていた子供…だ!!ゲホ…私が…拾ったから側に…置いでいだ…!!!」
そう言って、激しく咳き込む人形。
…でも違和感がある。人形が咳なんてするの?
「神田殿」
そのとき、建物の物陰からトマが姿を現した。
ゴーレムも一緒だ。
ユウはそれに気づくと、立ち上がり人形に声をかける。
「悪いがこちらも引き下がれん。あのアクマにお前の心臓を奪われるワケにはいかないんだ。今はいいが最後には必ず心臓をもらう」
仕方ないことなんだ。
それが私たちの仕事なのだから。
「巻き込んですまない」
「……………」
たった一言の謝罪だけどそこにはユウの優しさが込められている。
私は小さくほほえみ、トマのところへ向かった。