東の海編
□Act.1 Logue townV
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Side.Nanashi
(これが彼の有名な海賊王が処刑された場所か…)
港にある市場から処刑台がある中央広場はすぐだった。
広場にある噴水の近くでナナシはそびえ立つ処刑台を見上げた。
高さはそこまでないが、しかし妙に高く見える。
街の人間の話によると、二十二年前の今日に海賊王G・ロジャーはあの台で処刑されたという。
それを契機に訪れた海賊時代は今もなお続いていた。
「待てェ! おれの帽子ー!!」
たった一人の男の言葉が時代を変えたのかと感心していると聞き覚えのある声が聞こえた。
声のした方を見やると、麦わら帽子を拾う少年の姿があった。
少し前に会った破天荒な少年、ルフィだ。
そう言えば、彼は処刑台を見に行く途中だと言っていたなと思い出す。
ルフィはこちらに気づいていないのか、処刑台へと駆け寄っていく。
(……何をやってるんだ彼は)
様子を見ていたらルフィはいきなり処刑台に足をかけ、登り出した。
まるで猿のようにするすると登った彼は一番上に辿り着くと、そこから街を一望していた。
当然そんなことをすれば周囲の注目を浴びる。
確かあれは世界政府が管轄しているものであり、故に何かないよう監視している人間もいるわけで。
「こらァ! そこの君ィ!!」
案の定、警官が拡声器でルフィを注意する。
今すぐ降りろと言う警官に対して、しかしルフィは降りようとしない。
ルフィを処刑台から引きずり下ろすべく、警官が処刑台に向かおうとした。
しかし、一歩踏み出そうとした瞬間、何者かに殴られて倒れた。
(あれは…)
警官を殴ったのは女性だった。その手には金属製の刺がついた棍棒。
地面に倒れ伏した警官を見て人々がざわめき立つ。
女性はそんなことは気にした風もなく、処刑台に立つルフィを見上げた。