東の海編

□Act.1 Logue townX
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Side.Smoker

荒れ狂う海をスモーカーは険しい表情で見つめていた。

海賊船を始末するべく派遣した第一部隊はこの雨により、撤退を余儀なくされ。

処刑台には剣が振り下ろされようとした瞬間に雷が落ち。

交戦し捕らえた矢先に暴風が吹き、逃げられる。

これがすべて偶然によるものなのかとスモーカーは考える。



「大佐! 申し訳ありません。思わぬ突風によりバギー、アルビダ及びその一味を逃してしまいました…」



後方から走ってきた部下の言葉を背に聞く。

どうやら先程の風は他の海賊たちにも幸をもたらしたらしい。

だが、そんなことはどうでも良かった。



「おい。処刑台で笑った海賊を見たことがあるか?」

「と、とんでもない…。どんな虚勢を張った大物でも死の瞬間は必ず青ざめ、絶望に死ぬものです」

「…そうだろうな」



しかし、ルフィは笑った。

助かることを知っていた訳ではない。

彼は本気で自分の人生がここまでだと思っていた。

浮かべられた笑みは死を受け入れ、覚悟をしたからこそのものだ。

それは二十二年前の今日、この街で処刑された海賊王と同じ。



(海賊王、か…)



あの処刑台でルフィが言った言葉をスモーカーは思い出した。

この街であの処刑台で今日のこの日に大勢の前で彼はそう宣言した。

それはあまりにも出来すぎた出来事だった。

まるで神がそうさせたかのように。

やはり只者ではないとスモーカーが思っているとどこからか笑い声が聞こえた。

顔を上げると、港の建物の屋根の上に全身をローブで隠した男が立っていた。



「何故だ! 何故あの男に手を貸した?!―――ドラゴン!!」



男の名をスモーカーは叫んだ。

元はと言えば、彼の邪魔が入らなければルフィを逃すことはなかっただろう。

しかし、突如として現れた彼はルフィに助力をしたのである。

ドラゴンはスモーカーの問いに答えるようにこちらを見下ろした。


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