東の海編

□Act.1 Logue townV
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「探したよ。ルフィ」



女性は重たそうな金棒を肩に担ぎながら言う。

顔が上げられたことにより、女性の容貌がさらされる。

緩くウェーブのかかった黒髪。

ルージュが引かれた赤い唇は女性の美しい顔立ちによく映えていた。

現れた絶世の美女に老若男女問わずに色めき立つ。

現金なものだなとその様子を眺めながらナナシは思う。



「まさかあんた、アタシのこの顔を忘れたわけじゃないでしょうね?」

「おれはお前みたいな奴、知らねェぞ? 誰だおめェ?」

「アタシは決して忘れない。あんたはこのアタシを初めて殴った男だから」



女性の言葉に周囲がルフィに対して非難の視線を向けた。



「あの時の、あんたの激しい拳…。感じたわ…」



妖淫な笑みを浮かべ、艶やかな声で言う女性。
たったそれだけで野郎共はイチコロだった。

対するルフィはそうは思わなかったらしく、たじろいだ表情をする。



「アタシは強い男が好き。あんたはアタシのモノになるのよ、ルフィ」

「うるせェい。だいいち、誰だお前」

「まだ思い出さないのかい!」



どうやらあの女性とルフィは知り合いらしい。ルフィは忘れているようだが。

そうこうしている内に広場に警官隊がやってきた。



「そこの女! 大人しくしろ!」



警官隊の一人が昏倒している上司を助け起こした。

警棒を持っている警官がそう言うが、女性は動揺した様子を見せない。



「あんたたちにできるのかしら?」

「け、警部補…。―――大変です! 美しいです!」

「美女がどうした! 捕まえろ!」



そう言っている警部補の目がハートになっているのだから世話がない。

女性に銃を向けている警官たちも同様だ。



(あの人たちはアホか…)



あまりにも不甲斐ない男共にナナシは呆れた。

不意にどこかかから大砲が打ち上げられたかのような音が響いた。


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