東の海編

□Act.1 Logue townX
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「男の船出を邪魔する理由がどこにある」



雷鳴が轟いた。

今一度、時化る海を見つめた。



「スモーカー大佐!」



聞きなれた声に、しかしスモーカーは振り返らない。



「申し訳ありません。ロロノアとその一味を逃してしまいました」

「知っている」



腹心の部下の言葉にスモーカーは短く返した。

港にぶつかる波が砕け、飛沫が強風によって流される。

顔にかかるそれを拭うことなく、その向こうを睨みつけた。



「…船を出せ。麦わらの一味を追い、"偉大なる航路"へ向かう」



言って、振り返ると部下たちの困惑した表情があった。



「スモーカー大佐! 私も行きます!」

「た、たしぎ曹長?!」

「私はロロノアを許さない…。必ず、この手で捕まえてみせます!!」



刀を手にたしぎが力強くそう言った。

その姿に部下たちは戸惑い、スモーカーは笑みを零した。



「何をぐずぐずしている。早く船を出して麦わらを追うぞ!」

「で、ですが大佐! この島は大佐の管轄で、上が何と言うか…!」

「おれに指図するな! ……そう言っておけ」



呆気にとられている部下の横を通り過ぎた。

港の建物の屋根を見やったが、そこには誰の姿もない。

ふと、足を止めて未だ困惑する部下の顔を見た。

いつも以上に自分の眉間の皺が深くなっていることにスモーカーは気付かなかった。

だが、自分の顔が苦々しく歪められているのはわかる。



「それともう一つ、本部に言っとけ」

「は?」

「"水妖"がてめェらの膝元に現れる、とな」



言って、海を背にスモーカーは歩き出した。

すべては麦わらの一味を捕らえるべく、"偉大なる航路"へ向かうために。


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