TWO
□スキンシップじゃなくてセクハラです。
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ハスミンおはよう!
朝からきゃいきゃいした女子たちの声がさっそく耳にはいる。
もうさすがに慣れたが、毎朝俺の後ろから聞こてくるのはそろそろ勘弁してほしい。何なんだ、わざとなのか。
蓮実に追いつかれないよう早く教室に入ってしまおう。
「Mr.Hayami!」
「……」
早足の俺に気付いたのか。蓮実が駆け寄ってくる気配がする。グッドモーニングと言いながら俺の肩に手をかけ、ぐいっと顔を覗き込まれた。
「な、なんだよ…」
「ハスミン、早水くんと仲いいの?」「今のすごい変態チックだったんだけど笑」
親衛隊(自分で名付けてた)だか何だかが口々にしゃべる。ああだからうるさい女子は嫌いだ。
「ほら早水、挨拶は?」
「……おはようございます」
「何だか今日はいつも以上に元気がないな!ハハハ」
ハハハじゃねえよセクハラ教師。とりあえず手を離せ。肩を撫でるように触るな。
元気がなかったのは朝っぱらから女子がいるのにあんたに話しかけられたからである。
余計な勘違いされたら本当に迷惑だ。この学校は噂が広まりやすいんだから。
「何でそんなに機嫌が悪いんだ?」俺に話しがあるとか言って女子達を先に行かせる。たった一言で言うことを聞いてしまうのだから、何とも言えない敗北感を感じた。
「とりあえず手ェ離せよ」
「そうしたら逃げるだろ」
「逃げないから離せ!」
ふ、と蓮実が微笑する。ああまた乗せられてしまった。
「本当にきみは分かりやすいな。俺が嫌いか?」
「嫌いだ」
「そうかぁ〜俺は早水に嫌われてるのかぁ〜」
よしよし、そう言いながら俺の頭をわさわさ撫でる。すれ違う同級生が笑いながら通り過ぎるのを見てイライラしてきた。早く解放してほしい。
そもそも話ってなんだよ話って。頭を撫で続けるコイツの手を噛み砕いてやりたい。
「そういえばお前、あまり先生たちを馬鹿にするんじゃないぞ」
「確実に俺より頭が腐っている連中がいけないんだ」
「ここでは生徒は教師より低い位置にあるのだから言葉ではどうやっても勝てないよ」
「そんなことあるもんか。腐った籠の中に居たら、みんな腐っちゃうじゃねぇか」
「そうやって何もかも否定するのはやめなさい」
「第一お前だってな、この前…っひ!」
ようやくまともな話しになりだしたと思ったら、頭にあった手が俺の尻をかすめたのである。本人は気付いているのか気付いていないのか知らないが。
「どうした?続きは?」
「セクハラで訴えてやる!」
「教師が生徒に対して正しい生き方を教えてあげるのはセクハラに値するのですか、Mr.Hayami?」
教壇に立っている時のような口調で蓮実は言う。正しい生き方ってなんだ。
「俺からのスキンシップだよ。光栄に思ってほしいところだな」
「っ触るな!」今度は骨盤あたりを掴んでくる。その手を振りほどき、走って教室に駆け込んだ。
「何がスキンシップだ、堂々とセクハラしやがって。必ずいつか訴えてやる…」
「早水誰かにセクハラされたのか?」
たまたま隣に居たクラスメイトが声を掛けてくる。
「いや、なんでもねぇわ」
「そういえばさっき女子が言ってたけど、蓮実にキスされたんだって?」
「…………は」
そのことをネタに怜花たちにからかわれたのア言うまでもない。