おまけ小説

□闇に咲く桜
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「ここにいたのか……久し振りだね」

「まだ生きていたのか」

「不死である僕にその言葉はふさわしくない
僕を壊せる存在なんてもういない」

「………この数百年の時のなかで随分と変わったな
まるで壊されたがっているように聞こえるぞ
あの黒き大魔導士が」

「そうだろうね…
昔の僕は命というものに興味がなかった
ただ己の強大な魔力を操り弱き者は死んでいった」

「おまえに勝てるものなど人間にいるものか」

「僕もそう思っていたよ
……けど
彼女は違った……
彼女は何度も僕の前に現れては挑んできた」

「? 殺せなかったのか?」

「彼女の魔法のせいか 僕の死を与える魔法が効かなかったんだ
だけど痛めつけるくらいはできる
何度も痛めつけた…けれど何度も立ち上がったんだ」

「……………」

「ある日僕はその姿に光を見た
熱く燃え盛る命の炎を
僕はその光に惹き付けられた」

「ほぅ」

「僕は彼女に興味を持った
やがてその気持ちは興味ではなく好意へと変わった
だがそれは叶わぬものだと思っていた」

「もしや女も…」

「そうだ!! 彼女も僕を好きだと言った!!
誰もが怖れる黒魔導士を!!
何百年もの間 そんなことを言われたことはなかった
嬉しかった!! 彼女を大切にしようと思った
………けれど」

「魔法がそれを許さなかった」

「そうだ……彼女が赤ん坊を生んだときにそれは起こった…
魔力が僕の意思に反して周りの命をすべて喰らってしまった
……一人を除いて」

「流れからして女か」

「いや……赤ん坊だ」

「なんと!?」

「彼女に僕の魔法が効かなかったのは血によって受け継がれる加護によるものだった
その加護は彼女から離れ赤ん坊に移ったんだ」

「もしや、おまえがその手に持っているのが…」

「そうだ、僕と彼女の子だ」

「なぜ連れてきた」

「君に育ててもらいたいんだ」

「なぜこのわたしが人間など育てなくてはならないのだ!!」

「この子はただの人間じゃない
この僕と彼女の子…この世で僕を壊せるとしたらこの子しかいないんだ!!」

「……わたしに育てさせるということはどういうことかわかっているのか」

「わかっている
それも含めて君に頼んでいるんだ
もしこの子が君の、全てを破壊する炎を宿せれば
僕を壊すことができる」

「自らの子に竜と親殺しの宿命を背負わせるのか!!」

「それが世界のためだ」

「………わかった
それで? この子の名はなんという
まさかこのわたしに名付け親になれとは言わないだろうな」

「名は決まっている
この子の名は……」
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