その他長編集

□キミガタメ
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次の日の夜

グレイ「あー腹減った…
昨日飯を邪魔されなければな…
くそっ、昨日の奴ら凍らすだけじゃなくて殺っちまえばよかったかな」

昨日とは別の狩場でオレは獲物がやって来るのを待っていた

なぜ街に襲いに行かずに外で大人しく待っているかって?
答えは簡単
街に結界が張ってあるからだ
あの結界は人間しか通れない
人外が通ろうとすれば例えオレでもタダではすまず、弱ったところを殺られちまう

だからといって、獲物が釣れないわけではない

人外にとっては雑草でしかない草が、人間にとっては貴重な薬の元となるらしく、人間がよくその草を取りにくる

グレイ「昨日…たかが女1人に軍隊付けんなよな
はぁ…今日はさすがに獲物は釣れない…ん?」

諦めかけたその時、街の方から人影がみえた

グレイ「…来たか」

オレは素早く身を隠す

獲物はそこそこ背が高い
全身に布を纏い、フードを被っているため顔も分からなければ性別もわからない

本来ならオレは女しか襲わないが、今は何より腹が減っている
この際、男でもいい

グレイ「こんにちは」

オレが後ろから声をかけると、そいつは驚いて振り返る
勿論、オレは角を隠し、瞳も黒くしているので見た目は人間そのもの

グレイ「こんな所で会うなんて奇遇だな
あんたも薬目当てか?」

そう聞くと、ソイツはコクっと頷いた

グレイ「そうか、実はオレもなんだ」

妖しさなんて微塵も感じさせない、爽やかな笑みを浮かべる

グレイ「街の外で1人なのは少し怖いし、よければ一緒に行かないか?」

そいつはまたコクッと頷く
まぁ、断られたことなんて今までないんだけどな

グレイ「よし、じゃあ行こうぜ」

いつも通り、何気なく相手の肩に触れようとすると

グレイ「っへ!?」

気づいたらオレは地面にうつ伏せにして倒されていた

「いつもそうして女の子を誑かして、生気をうばっているのかい?」

聞いたことのない低い男の声
オレは投げ飛ばされたことにようやく気付き、態勢を整えようとしたがそれよりも早く身動きを封じられた

「もっとも、隙がありすぎてこんな簡単に捕まえられちゃうんだけどね」
グレイ「くそっ…てめぇ…」

オレを投げ飛ばした勢いでか、剥がれたフードから現れた顔は、炎のように真っ赤なツンツンと跳ねた髪に、黄金色のつり目が印象的な男だった

グレイ「くっ…人間ごときがオレに触るんじゃねぇ!」

このムカつく野郎をぶっ飛ばしてやるために、元の姿に戻る

「ダメだよ」
グレイ「んなっ!?」

元に戻ろうとしたのだが、ヤツに剣のような飾りがついた銀のネックレスを付けられたとたんまた人間の姿にもどってしまった

グレイ「な、なんだよこれは…力がはいらねぇ…
オレの中から魔力がいっさいなくなっちまってる…」
「だって、そういう効果の魔具だからね」

まるで慌てふためくオレを笑うかのように言ってくる

イグニール「僕の名はイグニール
これからおまえの主となる者だ」
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