リク小説 書く

□繰り返しの狭間
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何度も何度も繰り返された1日が終わりを迎えてから数百年後
世界から魔力が消え去り、人々はそれが当然になった時代

ゼレフ「教科書72ページを開いて
次からはこの時代についてやっていくから今日はここを読んで終わりにしよう
そうだな…ナツ・ドラグニル」

春の終わり頃、夏に向かって段々と強くなっているが未だに心地よい日差しに照らされ指名された桜色は気づくことなく机に突っ伏していた

ゼレフ「はぁ…」

教壇に立っていた焦茶色の髪の教師はため息を着くと桜色に近付き、制服の襟から覗く白い首筋を人差し指でスっと軽くなぞる

ナツ「ひゃあぁっ!!?」

すると、甲高い悲鳴と共にガバッと起き上がった桜色は両目を大きく見開き忙しなくあたりを見渡すと、呆れた様子で見下ろす教師と目が合った

ナツ「あっ…」
ゼレフ「おはよう、気持ちよさそうに眠っていたね
さて、君に質問だ
僕が何を言いたいかわかるかな?」

決して怒った様子では無い静かな口調
しかしそれが逆に恐ろしい

ナツ「…授業後職員室行きます」
ゼレフ「よろしい、待っているよ」

その言葉と共にまるで空気を読んで待っていたかのようにチャイムが鳴り授業は終わりとなった

何だかんだ今日1日の授業が終了し、現在教室にはナツとゼレフ先生
…そして先生に出された課題だけとなった

内容を見ると今日の授業の内容…だと思う、寝てたからよく覚えてない
わざわざこの為に作ったらしい

ゼレフ「まったく…予想はしていたけどまったく解けていないね」

課題を渡されてから15分ほど経っても真っ白のままのプリントを見て先生はため息をついた

そりゃそうだ
授業中寝てたんだからその復習をさせられてもわかるわけが無い

ゼレフ「わからなくて当然だなんて思ってないよね、ナツ」
ナツ「そ、そんなことおもってねーよ!」
ゼレフ「はぁ…ほら、教科書開いて」

考えていたことが筒抜けだったらしく、やっぱりという表情とともに促され大人しく教科書を開く

先生の説明を聞きながらプリントを埋めている時、開けっ放しになっていた窓から風が入り先生の髪が靡いた

ナツ「…なぁ、兄ちゃん」
ゼレフ「……この世界では僕と君は兄弟じゃないよ」
ナツ「それは今に限ったことじゃないだろ」
ゼレフ「確かにそうだったね
それで、どうしたの?」
ナツ「兄ちゃんの髪ってもともとそんな色だったっけ?」

風に靡く焦茶色の髪
この学校で会った時からこの色だった
けれど、見れば見るほど違和感しか感じない
元々は…昔は違う色だったような…

ゼレフ「…長生きしているとね、たまには髪色を変えたくなるんだよ」
ナツ「ふーん、そんなもんなの?」
ゼレフ「そんなものだよ」

納得したようなしてないような…とにかく疑問は解決したのかナツは再び課題と向き合い始めた




…髪色変えたの気づかれないと思ってたのにな

一つ前の君が言ったからだよ

「兄ちゃんの髪…誰かと似てる気がする」

ようやく殆どの記憶が消えているのに僕の髪のせいでまた振り出しに戻るのは避けたくて髪色を変えた
まぁまたすぐに黒に戻せるから問題ないしね

ゼレフ「……」

ほんの気まぐれだった
上げられた前髪のおかげで見える額
ナツが転生した数だけ誰も触れていないはずなのに未だ見える気がする『あの男』の所有印
それが少し面白くなくて、そこに触れるだけのキスをした

ナツ「ふぇっ!?な、なにすんだよ!!?」

それほど驚いたのかナツは椅子ごと倒れそうになるほど後ろに飛び跳ねた

ゼレフ「長生きしていると、たまには可愛い弟の額にキスをしたくなるんだよ」
ナツ「それはない!絶対ない!ってかオレは可愛くねぇ!」

可愛い弟との触れ合い…こんな楽しい時間はいつまでも続けばいいと思う
けれど現実は酷く残酷だ
僕の勘が正しければ、こうしてナツの監視を理由に触れ合えるのは今回が最後
次のナツは昔のことも、もちろん僕のこともキレイさっぱり忘れている

僕が干渉しなければ、きっとナツはあの男と出会い惹かれ合うだろう
あぁ…なんでこんなに面白くないと思うのだろう
ナツの幸せは僕の幸せのはずなのに…

どうか…ナツが再び過ちを起こさぬように…
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