JOJO短編
□正直になれない彼と私。
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DIOさんは恋人設定で。甘々。
夢主はけっこう虐めたがり←
DIOさん、恋人のそこに痺れた憧れたァ!!←
2月14日。
この日は年に一度「バレンタインデー」と呼ばれるイベントの日である。
男女、友達、恋人、さらには家族間でチョコレートの受け渡しが行われる。
そしてちょっとした
「恋の一大イベント」
......でもある。
「おいティアラ」
「ん、なぁに?」
「......呼んでやっただけだ」
「なにそれ......ま、いいけど」
ティアラの家に突然押し掛けてきたDIO。
傲慢で有無を言わさない行動はいつもの事だが今日はいつもとは違っていた。
とくに構うでもなくそっとしておいたら1時間程経った辺りから急にそわそわとし始め、ソファに座る足をしきりに組み直している。
一体どうしたのか。
ティアラはDIOに気付かれないようにしながら反対側に座ったソファで顔の口部分を読んでいる雑誌でDIOから見えないように隠しながら静かにその様子を見守っていた。
「おいティアラ」
「なぁに?」
「今日は何日だ」
「2月14日だね」
「そうだ」
「うん.........それで?」
あえて何が言いたいか分かっていても......聞いてみる。
こうゆう地味に困っている彼を見るのは楽しいのだ。
雑誌で隠した口がにやけてしまうが雑誌を少しだけ上にずらしてバレないよう繕う。
さっきから「くそ...そこまでこのDIOに言わせるのか!?」なんて苦い顔をしているがティアラは何も言わない。言わない方が......楽しいから。
「なにか、渡すものは無いのか?」
「何かって?」
あえてとぼける。
ぐぬぬ、と吸血鬼さんは歯ぎしりするけどティアラは涼しい顔で雑誌に視線を落とす。
まだまだ、ここで簡単に渡しちゃ......DIOの思い通りじゃん。
「2月14日。貴様は何かピンと来ないのか?」
「うーん......来ない。なんだっけ?」
「貴様......本気で言っているのか」
怒りの顔から絶望の顔へ。
悪の帝王さん、それくらいで落胆しちゃダメだよ、もう。
雑誌からチラッと視線をよこすと目が合ってティアラの方が慌てて雑誌に視線を戻した。
私はこうゆう所が弱い。あの赤い瞳に見つめられると......何故か頭が真っ白になってしまう。
雑誌で隠しきれずに動揺が見えてしまったらしく向かい側に座るDIOが勝ち誇ったような顔になる。なんかムカつくなぁ。
「っ......で?DIO様は何をして頂きたいのですか?」
「俺に渡すものは無いのかと聞いているんだ」
「初めて聞いたよ」
「文句を言うな。チョコを渡せ」
「素直じゃないなぁ......」
やれやれと雑誌をテーブルに置き、冷蔵庫へ向かい、例のモノを取り出してきてDIOの前に置いた。
DIOの眼前に置かれたのは赤いリボンが結ばれた茶色の小さな箱。
彼は満足げにそれを見た後ビリビリと乱暴にそれを破いて中身を取り出した。
「......ほぅ」
そう言って広げられた紙切れの真ん中に置かれた箱の中には綺麗に等分された生チョコが入っている。
DIOはそれを手に持ってすん、と香りを嗅いだ後、立って様子を見ているティアラの方を見やった。
「どうしたの?」
「なかなかいい出来じゃないか」
「お褒めに預かり光栄です」
「素直じゃないなぁ......」
「お互い様ですよ...んっ、!?」
ため息交じりに言った言葉のあとに口が閉じる前に深く唇が合わさって一切の呼吸が封じられる。
「んぅ...っ」
「......。」
「、......ぅ、DIO...苦し ぃ...」
「......。」
顔を離そうとすると頭を両側から固定されて逃げ場がなくなる。一体どこまで呼吸困難にしたら気が済むのか。
「......!」
口を開けてなんとか空気呼吸を確保しようとしたところでふんわりと口の中に甘さを感じてついさっきDIOにあげたチョコだと認識する。
「...は、ふぅ...、DIO...んっ//」
「仕方がないな......」
顔が真っ赤になってギブギブ、と背中を叩けば名残惜しそうに合わさっていた唇離れ一気に供給不足だった酸素を肺に取り入れる。これだからキスは何度やっても慣れない。
肩で息をする傍、彼の方は息さえ上がっていない。これこそが人間と吸血鬼の差なのだろうか。
「予告無しにするのは嫌いだよ」
「すまなかった。だがとても嬉しかったからお礼をせねばと思ってな」
キスがお礼とは大した考えの持ち主だ、とティアラは思う。
でも顔はそれなりの美貌があるのでほとんどの女性はそれで喜んでしまうんだろう。
でも私は違う。そんなのは通用しないってことをカリスマに教えてあげるんだっ。
なぜか負けた気分だったのでツンとそっぽを向いてDIOの視線を無視する。
でもそんなのは意味なくて腰を抱き寄せられて密着した状態に。
「......甘過ぎたかも」
口の端から垂れてしまったチョコをすくって舐めるとやっぱり甘かった。
「まあまあ、だな」
そう言ったDIOはティアラの唇の端をそっとなぞるように舐めた。
「甘過ぎ......いろいろと」
「何を言う。この甘さが好きなのだ」
「ッ......//」
目の前で満面の笑みを見せられて一気に顔に熱が集まってDIOの事を直視出来なくなる。
とっさに彼の胸に顔を押し付けて赤い顔を隠した。
上の方からハハハ、と和やかに笑う声が聞こえる。
「優しすぎるよ、DIOは」
「お前だけにしてやっているんだ。ティアラ」
悪の帝王のくせに優しいから私は足りない分の意地悪をしてやってる(ということにしておく)。
こんなの某アニメのバ◯キン◯ンでさえ呆れ返る優しさだよ。
何よりも優しい手つきで頭を撫でて抱きしめる腕に力を込めてくる。
「......しっかりしてよ、悪の帝王さん」
「すまなかったな。次から気を付けよう」
「そんな気ない癖に」
「でも嫌いじゃないだろう?」
......。
「......まあまあ」
当初のからかって遊ぶ目的は達成出来なかったけど、
これはこれで楽しめたバレンタインだった。
今度はもう少し困らせてやる......そう決心しながら今は彼の大きな腕に抱かれることにした。
エンド。