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□世界からの隔絶を望んだ子供たちは
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廃園になった遊園地に朝方、二人で忍び込んだ
朝になっても落ちない丸い月はなんだか夢を見ているように錯覚させた
回らない回転木馬に二人で乗って、まるでここが摩天楼、二人だけの国のような気がした


周りには誰も人は居ないのに、誰かに見つかりそうな気がしたから、秘密を話すように声を潜めて戯れた
徐々に朝焼けが広がり雲を赤く、桃色に空を染め上げる
不思議の国の空は少し薄気味悪いけど、君が隣にいるならわたしはアリスになれるの!なんて言うもんだから
さしずめ僕は白兎だ、なんて面白くもない冗談を言い合えた
お洒落なお茶会なんて行われることもないけれど、僕たち二人は制服のままでも、自販機で買った缶コーヒーの苦味でちょっぴり大人になれた気がした
アリスがコーヒーは苦くて飲めないよ、とぐずるものだから僕は甘いカフェラテを彼女の口に注いだ
アリスは満足気にあまい、と破顔した
アリスは無類の甘党だ
ママの作るクッキーとプリンが大好きで、きっとアリスの体は甘くなっているに違いない
潤んだ瞳はゼリーかな?ぽってりした唇はイチゴのムース?滑らかな頬は粉砂糖をまぶしてあるのかな?
君の口内を求めればいつもあまい香りが鼻腔を擽るのは、きっと君の内蔵や血液がイチゴジャムで出来てるからだろうね!
あぁ!君から放たれるあまい香りが僕を惹き付けて離さないんだ!
君を離したくないからもう1つになってしまおうよ!

「アリス、僕とひとつになろう?」

「遥斗?」

「都子、好きだよ、好き」

「遥斗?どうしたの?」

なんでもないよ、と耳元で安心させるように囁いて、ぎゅ、と抱き締めた
首にかかっている長くてカールした髪を除けて、真っ白で柔らかく、マシュマロみたいな肌の下に隠れるイチゴジャムを目掛けて歯を立てた



【世界からの隔絶を望んだ子供たちは】



甘い香りを胸に納めて肺がきゅんと苦しんだ
彼女の首の液体は思ったよりも早く制服を赤に染めた




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