この手の中に、

□いつもの日常
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ボロアパートの二階、一番右奥


そこが俺の家。


一人で住むには十分なスペースがあるから不自由はない
高校に入るって理由で家を出た
誰も何も言わない
まぁそれは仕方ねえけど一応報告だけ

家の近くの高校受けても良かったけどなんとなくやめた
今年で16だぞ?自分一人で生きていけるはずだ



……という決意を胸に俺は今
進路指導室で反省文を作成中なのである。
先生は今は誰もいない
ちなみに反省文は喧嘩とかそーゆう物騒なのじゃなくて朝起きれなくて遅刻


「遅刻で反省文とか何書けばいいんだよ」

「ん?俺の写すか?」

「いらねえ。どーせしょうもない事書いてんだろ」

「普通だって!!」

「今日晩飯どーすっかな」

「無視すんな!!」

机を挟んで正面に座ってるこいつ
ギャーギャーうるさい
中学から一緒の腐れ縁


「もうチャイム鳴った、さっさと教室帰るよ」

クラスメイトの神一だ
チャイムが鳴ったらしく教室に帰される

休憩なんかはよく三人で居る
理由とかはないけどいつの間にかって感じ





教室に入ると20代後半ぐらいの先生が立っていた

「結木、夏野、そして神一、なんでお前らはいつも授業中に入って来るんだー」

「反省文書いてたんだよ!!
てかまだ授業始めてないだろ?ならセーフっしょ!なあ、桜?」

「俺の事を名前で呼ぶんじゃねえよ」

「おーこわー、先生のせいで桜怒ったじゃんかー」


確実に原因はお前だ太陽
夏野太陽とかかっこいい名前してんじゃねえよ
似合わねえよ


「先生、あたしはあんたが面倒見切れないこいつら馬鹿達の面倒見てるんじゃんか」

「神一、先生にあんたはないだろ…」

「なら敬ってもらえるぐらい立派に先生やってみなさいよ」

「性格きっついねえ?琴ちゃん
名前は可愛いのに勿体ないなー」

「あんたに関係ないでしょ!!」

「先生はもう泣きそうだよ…」


長くなりそうだったから俺は早々に席へ座った
窓側の一番後ろ
ここは日当たりが良くて最高だ


「どんまい先生!」

そう笑いながら振り返りつつ近づいてくるこいつ

「なあ桜今日は一緒に帰ろうぜ!
フラぺチーノ飲もう!フラぺチーノ!」

俺の前の席に座って話しかけて来る
誰かの席に勝手に座ってるわけじゃない
こいつは俺の前の席だ
一瞬和んだ俺の心を返しやがれ


「本当に悩みも何もない時間の有り余ってる高校生って感じね」

そう言って隣りの席に座る神一
お察しの通りこいつは俺の隣りの席だ

「琴ちゃんも来るでしょ?
今なら豪華特典満開の桜がついてくるよ?」

「何で人間が満開になるのよ頭悪いんじゃないの
まぁ今日は時間あるし行ってもいいけどね」

「俺は行くなんて言ってねえ」

「じゃあ三人で行こっか!」

「そう言えばフラぺチーノ新作出てたわよ?」

「そーいや冷蔵庫に食材なかった気がするな
帰りスーパーでも寄って行くか」

「琴ちゃんほんと!?
放課後が待ち遠しいー!!」

「スーパーなら最近近くにできた【一丸】ってとこが野菜セールやってるわよ」

「あーそういやチラシ来てたな
んでも場所分かんねえしなー」

「学校終わったらすぐ行こう!
早く行きたい!」

「何でここまで噛みあわない会話が続くのか先生は不思議すぎて怖い…」




言うまでもないがこの授業は進まなかった
理由は先生が話を聞かない俺達に無視されてると思って泣きだしたからだ
成人男性、しかも教師なのに生徒の前でよくこんなに泣けるもんだ
情けねえ

クラスの奴らは慰めるのに時間を費やし
俺達は自分の思うがままを口に出して話していた


お互いがお互いの話を聞かずに勝手に話が進み
放課後になって俺達は呼びだされ怒ってるのかよく分からないテンションで何十分も説教された
そして先生の言葉が出る事に神一が反論して更に時間をとられた








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