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□恋心と一目惚れ
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病院に向かう途中、前方に見知らぬ男の人が数人の女の人たちをナンパしている姿が目に入った。








「うげーっ、ナンパだよ…。朝からよくそんなことするねー……」







面倒事が嫌いな史奈は目を逸らし、素通りしようと考えた瞬間








「君、ちょっといいかな?」








後ろから手首を掴まれた。
きっと、このときの史奈の顔は周りから見ても明らかに不機嫌顔だったに違いない。








「何ですか……って、海常の森山さん?」







掴まれている腕を辿っていくと、海常の制服を着た森山 由孝の姿が。







何で東京に神奈川の海常生がいるんだ、と疑問に思いつつ目線を少し上に向ける。









「……俺達、どこかで会ったことあるかな?」







「無いですね。むしろ初対面ですよ。 知り合いに情報や分析に特化した選手がいますから多分、そのせいかと…」








選手という言葉に反応した森山は史奈の手首から自分の手を離した。







「名前、教えて貰ってもいいかな?」






「誠凛高校1年、天空 史奈です。女子バスケットボール部の副主将を務めています」







またまた女子バスケットボール部という単語に目を見開く森山。







そんなことはお構いなしに史奈は鞄を探り、綺麗に包装された飴玉を取り出す。







「森山さんも副主将でしたね。あ、飴食べますか?」







森山の手の平に水色の透明な袋に包まれた飴玉を1つ静かに置いた。








「その飴、お気に入りなんです。私とあの人を繋ぐものだから……」






「……え?」







一瞬だが、少し切ない表情をした史奈見た森山は目を伏せる。
飴を貰ったはいいが、そんな大事な話をされては食べ辛い。






「(笠松にでもやるとするか……。何かアイツ、この飴と雰囲気似てるし……)」







史奈から貰った飴玉を制服のポケットに入れ、森山は思わず笑みを溢した。






「史奈ちゃん、この後どこか行か…「ないですね。すみません」ガード固いね」







まさかの即答に目を見開く森山に対して史奈は呑気に空を眺めていた。







「ナンパは程々にですよ。幸男く…いえ、笠松さんに宜しくお伝えください」






史奈は病院という名の目的地に向かうため、森山に背を向ける。








そして








「あ、その飴…氷砂糖ですから。疲れたときに食べてください」






背を向けたまま、手を振った。






「……なんだよ、この気持ち…っ!!」







史奈の後ろ姿を見送った森山はさっき貰った飴玉を口の中に放り込む。






「(前言撤回だ。この飴は、笠松の雰囲気になんか似てない)」








「……また会えるといいな」







飴の包み紙を見つめながら、「美味しいけど、甘いな…」と呟いた。








余韻に浸っている森山にチームメイトからの拳骨がお見舞いされるのは、もうちょっと先の話。
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