haco
□忍び寄る魔の手
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────────……翌日
いつものように朝練をこなし、滴り落ちる汗を拭いながら体育館から自分たちのクラス1Bに向かっている時だった。
まさか、あんなことが起きるなんて誰も予想していないだろう。
この日も珠里のダジャレから始まり、それを有里がツッコみ、それを見て笑う彩と美弦と史奈。
こんな時間がずっと続けばいい、と思っていた。
「朝から部活って、慣れるもんだけどやっぱりキツいな…」
珠里は水で濡らしたタオルを額にのせ、軽く息をついた。
「あー、あっつ…。部活は楽しいけど、暑いのはどうも苦手だよ」
そう言って、制服のスカートを掴み空気を入れるためにパタパタと扇ぐ。
その際にチラチラ見える史奈の白くて綺麗な足がどうしても視界に入ってしまう美弦は、顔を手で隠しながら
「…っ!//// おっ、女の子が…、そんなことしちゃ…ダメだよ…っ!////」
と、凄く小さい声でつぶやいた。
だけど一番近くにいた有里と彩には聞こえていたらしく、2人は笑みを溢しながら美弦の肩に手を回す。
「美弦、今更なに言ってんのー?」
「史奈がこういうことするって知らなかったけ?」
「知らないよ…っ// 初めて見た!!///」
まだ、恥ずかしいようで首をフルフル振っている美弦を見て、みんなは「可愛いなー、おいっ!」などと口々に言っていた。
ただし、1人を除いては。
「珠里、どうかした?」
珠里以外、美弦の周りを囲んで話をしていたのに珠里だけが寄ってこず、辺りを見回していた。
その様子に気付いた彩は珠里の元に駆け寄ろうと向きを変える。
「彩ちゃん、そこにいてくれっ!!」
さっきまで朝練でヘロヘロになっていた珠里が目を凝らしてある一点の方ばかりを徹底的に凝視していた。
どうやら、梟の目を使っているようだ。
流星 珠里 side
「(さっき、見えたのは女子生徒2人。しかも同い歳とみた…。そのうち1人は上木鉢を持っていた……)」
上木鉢を持っていた女子生徒がこの後、何をしようとしたかは大体、予想がつく。
でも、何でこんなことをするんだ。
今のは、絶対に美弦を狙ってた──……
流星 珠里 side end