haco

□恋愛ストッパー
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「いえーい!恋バナ暴露大会だね!」







なんだかんだでこういう類の話を聞くのが好きな史奈が一番乗り気である。








「じゃあ初めはー…」









「「彩(ちゃん)でしょー!!」」









「えっえ、なんで私…!?」







突然のフリに困惑する彩。史奈と珠里の顔が自然とにやけている。







「えっ、彩は好きな人、いるの?」







美弦が何故トップバッターが彩なのか不思議に思っているようだ。








「じゃあ、この際だから言うね……」








「私の好きな人は…」









彩の顔がいつも以上に赤い。耳まで真っ赤である。









「伊月先輩で、す…」







「よく言った!彩!」







「やっぱりかー!」








「「えっ、みんな知ってたの!?」」







彩が驚くのはわかるが、無色の帝王一番の鈍感、夜光 美弦も同時に驚いた。他の3人は笑顔で手を叩いている。








「いや、気づかない方がおかしいだろー!」





「自分で気づいてないだろうけど伊月先輩を見る彩の目はすっごく優しいんだよー!」







「もちろん、応援するよ!がんばれっ!」







「珠里、有里さん、史奈ありがとう!私、がんばるね!…勇気でたらいいなぁ」







「ぜ、全然気づかなかった…!でも、彩頑張ってね。私にできることあったら言ってね!!」







「美弦も、ありがとう!」








彩が一人一人にギュッと抱きついていった。








「じゃあ、次は有里!好きな殿方はいるのかい?」







「珠里www 言い方www」








「えー…?」







まさか次にふられるとは思ってなかったので有里は戸惑っていた。基本的に女子の恋話は流れが速いものだ。







いつもは姉御肌でハキハキとしているが、人一倍純粋な心を持っている有里は自分の恋話に滅法、弱かったりする。








「有里さんはねー、こないだ出逢った人に一目惚…!」





「え、彩?なんだって?」






「なんでもないです!」








一瞬にして彩を睨みつけ黙らせた有里だが顔がみるみる赤くなるのが分かった。
しかし、珠里、美弦、史奈には一体なんのことだか分からない。







「コホンッ!今は好きな人いないよー!好きなタイプは優しくておもしろい人!以上っ!!」







そう言って有里は無理やり自分の話を終わらせた。こうなってしまえば有里のことが気になるものの、渋々ながらも流れは自然と次の人に移る。








「うへー、うちぃ?」







有里の隣に座っていた珠里が奇声を発する。








「さて、我らが主将さんの恋愛はどうなんでしょうかねっ!?」








自分の話が終わったので気分が楽になったのか有里がぐいぐいと珠里を押す。









「うちはねー実は… いるよ、好きな人」









「「「「ええっ!?」」」」









珠里以外の4人が本日一番の声をあげた。
まさか、あの珠里に好きな人がいるなんて…!などと本人に知れたら失礼なことをみんな、思っていた。








「え、そんなに意外か!?」








「いやぁ… 今までもこうやって恋バナをしなかったわけじゃないけど、珠里に好きな人がいるなんて話は出なかったからさー…」








有里も驚きを隠せない。今までは「恋バナ?そんなことよりバスケしようぜ!」という感じの珠里だったので当然である。








「(…日向先輩かなぁ。)」








なんて密かに史奈は思っていた。









「で、誰なの!誰なの!?」








「もー、やめようぜ、この話ー!」








珠里が真っ赤になった顔を両手で覆う。そうはさせるかと有里と彩が珠里に掴みかかる。








「何、言ってんの!この場においてそんなことが許されるわけないだろーが!!」







「そうだよ!私だって言ったんだからー!」








観念したようでようやく珠里が顔をあげた。









「うぅー、…………だよ」







「えっ?」








「………真太郎だよっ!!」









「「「えぇー!?」」」








再び、大きな声が響きわたった。








真太郎とはキセキの世代の天才シューター、緑間 真太郎のことだろう。
みんな、てっきり同じ学校の人かと思っていたので意外すぎる人物の名が出たことに先ほど以上に驚いた。
史奈にいたっては予想がはずれたことにもショックをうけていた。








「あれ?珠里って緑間くんのこと、馬があわないって言って苦手じゃなかったっけ!?」








「背が高くて、真面目で誰よりも努力してるところに惚れたんだよー!」








どうやら珠里も恥ずかしさが吹っ切れたようだ。









「緑間かー…意外すぎる…!」









「たしか秀徳だよね?練習試合とかで会えたらいいね!」








「………うん」









いつもは元気いっぱいの珠里も今は珍しく大人しい。








「そっか、そっか。珠里はツンデレが好きかー!」








「うっさい!! そういう史奈はどうなんだよ!!」








「ん?あたしはいないよー?」









突然ふられたのにもかかわらず史奈の顔はきょとんとしていた。








「今はこうやってバカやってるのが一番楽しいからさ!みんなが一番っ!!」







「えぇー、何それ、ずるいよー!」








「だーかーらー!好きな人はいないんだからしょうがないじゃん?……あっ!そういやさー、そろそろ体育祭じゃん!楽しみだよね、明日の午前のHRで出る競技とか決めるらしいよー?」







「マジでか!うち、何に出ようかなー!」








史奈がうまい具合に話を逸らしたため話が体育祭の話にいってしまったようだ。










その後、下校時間となり恋バナ暴露大会は必然的に尾開きとなった。



















「(好きな人はいないよ。 好きな人、はね)」








この、彼に対する想いが恋愛感情なのか尊敬なのか自分自身、よくわかっていない史奈は大切なあの人の顔を思い浮かべながら、ゆっくりと家に帰ったのであった。
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