Fragment of SAKURA
□02 処遇
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ーー
私は真っ白な空間にいた。
「おかえり凛。」
目の前に映るのは見覚えのある人だった。
『…かあさま?……母様ーーーっ!
』
私の心の支えであった義理の母親。
小さい時に亡くした母と父のかわりに身寄りのなかった私を育ててくれた人。
幼い記憶がない私は、本当の母でないことを知った後も"母様"と呼んでいる。
母様は道場の師範代の妻であり、そこで育てられた私は男として育てられた。
しかし…決して忘れない悲惨な出来事により、義理の母も父も二度と会えない存在となった。
母様の元へ走って抱きつくと、大好きなぬくもりが身体中にひろがる。
母様は泣きじゃくる私を抱きしめるとこうつぶやいた。
「凛。またそんな格好をしているの?あなたは女の子でしょう。私は、稽古の時以外は袴は着ないでいいって言ってるでしょう?」
『いいえ、父様のように強くなると誓った日から。私は男として生きているのです。…復讐を誓ったあの日から…。』
「…ねぇ、凛。私は貴方にそんなこと望んでないわ」
母様の胸に押さえつけた顔を放し、着物を掴んで私は大声をあげた。
『何を言っているのです?!私は…2人の仇を打ちたくて強くなると誓ったのです!父様のように強く!』
「凛。俺は剣を握る理由を教えたはずだぞ。忘れたのか?」
ふと、横から手が伸びてきて、わたしの肩におかれる。
優しい声に振り返ると、そこには父様がいた。
『剣を握る理由?忘れるわけありません。父様』
「なら、わかってるいるはずだ。私たちが望んでいること。」
『ええ、わかっていますよ。私はきっと復讐を果たしますから。ですが…2人に会っているということは、私は死んでしまったのですね。』
「いいえ、貴方は死んでいませんよ」
『!?』
そう言ったとたん、2人はまるで空気のように浮かんでいく。
だんだんその存在が消えていく…。
私は必死に手を伸ばすが、届かない。
「凛。お前はわかっていない。私たちが望んでいることは復讐ではないんだよ。」
父様の声が聞こえた途端、2人の存在は消えてしまった。
無の空間に残された私は声の限り叫ぶ。
『嫌!置いてかないで!1人にしないで!嫌ぁあーーー!』
何日かぶりの夢だった。
、