Fragment of SAKURA
□03 糧調べ
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道場と言われた場所は思っていたより広かった。
建物からして、そこまで広くないと予想していたからだ。
先に入っていた沖田は二本木刀を持っており、一本をこちらに投げる。
「真剣でやりたいんだけど、たぶん僕、君を殺しちゃうだろうからね。」
『…だと思います。こんなとこで殺されるわけにはいかないのでね』
獲物を見つけたように、笑顔を絶やさない沖田に思わず寒気がする。
(ものすごい剣客なんだろう。
京に行くまでに新選組のことを聞いたけど、誰でも沖田総司の名前ばかり出していたしね。)
私と沖田は向かい合うと、一礼しお互い木刀を構える。
審判には斎藤がしてくれた。
「…はじめ」
斎藤の声によって、少しざわついていた外野陣も口を閉じる。
目の前の沖田の動きに集中する、
女の私がこの人に勝つのは難しい、力負けするに決まってるし、鍔迫り合いは負けるはずだ。
一瞬の隙に間合いに入り込めさえすればいいのだが…簡単にそんなことが通用する相手では生憎違う。
(さて、どう来る?沖田さん!)
先に仕掛けたのは沖田だった。
沖田の得意の三段突きを間一髪避けると、そのまま反撃に出るが、反応が早く受け止められる。
そこまでは瞬時に予測した私は、小さな体を利用して飛ばされそうになる刀を強く握りながら、僅かな隙間に身を入れ、すかさずもう一発入れる。
それも、沖田は反応する。
「へぇ、なかなかやるじゃない、君」
そう言うと、押し飛ばされ素早く今度は沖田が間合いを詰めて打ち込んでくる。
『くっ!』
またまた間一髪反応できたが、次の一発は予測できず、木刀を弾き飛ばされ、次の瞬間には、体に打ち込まれていた。
『!!つっ!』
「一本。勝者、総司」
斎藤が審判を下すと、観客が湧き上がる。
「お前やるじゃん!まさな総司の突きや避けるなんてさ!」
藤堂が興奮しながら痛みに膝をついていた私の背中を気遣いなく叩きまくる。
「まったくだ!ここまで出来るとはな!よかったぜ」
続いて永倉も叩くもんだから、もう痛いどころではない!
『痛い!痛い!2人とも加減してくださいよ!』
私は背中をさすりながら、よろよろと立ち上がる。
打ち込まれたところがまだズキズキと痛み出す。
(遠慮なく打ち込むんだもん痛いにもほどがあるよ。沖田さん)
「まっ、思ってたよりは楽しめたかな。まだまだだけどね」
「見事な試合だった、なぁ、トシ入隊は許可出来るのではないか?隊士よりは腕があると思うぞ」
「局長と同意見です、そこらの平隊士よりは使えると思います」
「あぁ、俺もだ。踏み込みと力は弱ぇが、早さは下手すりゃ、斎藤の居合いに負けねぇぐらい速ぇんじゃねぇか。」
斎藤、原田も近藤の意見に賛成する。
「…あぁ認めるよ。北村の入隊をな。」
『ありがとうございます』
「だが昨夜の件もあるし、お前は平隊士に混ぜられねぇ。だから追って配分を下す」
それまで部屋でおとなしくしてろと言う土方の言葉に私は頷いた。