Fragment of SAKURA
□04 試み 企み
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私が隊士となってから1週間が経とうしていた。
朝稽古?というか手合わせだとか言って幹部の人達を相手にするのが日課になりそうだった。
そりゃ新選組の幹部達だもの、私が敵うはずないのに、遠慮なく向かってくるんだ。
そのおかげか、少し剣術に磨きがかかった気もするがおまけに、身体中打ち身だらけだけども。
まぁあと少し経てば、それも飽きて日課じゃなくなるようになるんだろう。
何より私は達筋がよいらしく、いい師範代だったのだなと褒められることが嬉しかった。
昼間は外出はさせてもらえず、主に隊士達と稽古か、主に雑用、時に山崎君の手伝い。
千鶴は軟禁状態が続いているようだけど、私も行動範囲が少し広いだけであって、屯所から外に出してもらえてない。
『にしても、まだ覚えらんねー』
私は物覚えがよくなかったようだ。
左之さんと新八さんの部屋に行きたいのだが…部屋の前まできて悩んでいる。
…ここ、沖田さんだったかも。
ちょうどそこに、巡察帰りの沖田が現れる。
「どうしたの?秀也君。」
『…すいません。ここって誰の部屋ですか?』
「そこは、左之さんと新八さんの部屋だよ。」
その言葉にホッと胸を撫で下ろす。
前に間違えて平助の服置いちゃって大変だったんだよね。
安心した顔をした私の頬を急に沖田はつねる。
『ひぃたい、ひぃたい!なにひゅるんでしゅか!(痛い、痛い!なにするんですか!)』
「まさかまだ覚えてないの?そろそろ覚えないとね。」
そう言いながら、さらにつねった頬をさらに引っ張る!
私は、放してくれと促すが、一向に悪戯な笑みは消えない。
「総司〜、って秀也!なにされてんだよ」
そこに同じく巡察の帰りである平助が登場。
やっとの思いで放してもらうと頬を摩りながら、少し睨んでやった。
失礼します、と不在とわかってるが声を掛けてから襖をあけ、洗濯物を置く。
「おい、秀也。そこは俺の部屋なんだけど」
『え、だって沖田さんが……』
振り返ると、もう沖田はいなかった。
まさか、騙されていたなんて思わなかった、もう廊下の角を曲がりそうな沖田に向かって声を張り上げ名前を呼ぶが、彼はにっこり笑い、手をひらひらさせて見えなくなった。
私は完全に沖田に遊ばれているみたい。
(まぁ、覚えてない私が悪いのだけど。)
後で俺が言っておいてやるよなんて言う平助に礼を言う。
ため息つきながら、平助と左之さん達の部屋に向かうことにした。