Fragment of SAKURA

□06 桃色 灰色
1ページ/5ページ

『なんだって!そんな話聞いてないよ平助!』


先日、歓迎会をするって言っていたけれど、まさか…島原でするとは知らない。

「なーーに焦ってんだよ。あ、お前行ったことねぇのか!」


そりゃそうだろう。私は男として生きているが、女を見に色街に行くという理由で生きていたわけではない。

しかも、女子は入れない場所だったし。

…まぁ、看破されなきゃいい話で、実際この人たちも騙せているの問題ないとは思うが、当日になって知るとは予想外だ。


『い、行ったことないし、別に俺は屯所でもいいんですけど』

「まぁまぁ、北村くん。いいじゃないか、たまには羽を伸ばしてくれ、最近君には隊務を頑張ってもらっているからな」

井上にそんな優しい笑顔で言われると、はいとしか言えないじゃないか。

『じゃぁ…お言葉に甘えさせてもらいます』

「おっしゃー!」

私の歓迎会なのに、1番はしゃいでいるのは平助だ。

よっぽど酒好きなのだろう、永倉もそれに負けないぐらい騒いでいるが…。


藤堂、永倉、原田は絶対参加するとは思っていたが、まさか土方さんも来るとは思わなかった。

『土方さんも来てくださるのですか?』

「あぁ?俺が行っちゃ悪いのか」

『そう意味じゃなくて、いつも忙しそうだし、俺なんかの歓迎会にわざわざ来てくださるなんて…』

と、語尾をにごして話すと、いつもの鬼の形相とはうってかわって、言わば、正反対の笑みを向けた。

「なーに言ってやがる、俺にも祝わせろ」

「土方さんも呑めるお酒あるかなー」

「総司!てめぇ、俺はな呑めねえんじゃねー!呑まないだけだって言ってんだろ」


沖田も斎藤も同席してくれるみたい。

近藤、山南は大阪遠征だし、井上は屯所を幹部が出払ってしまい、あけることはいけないから欠席、

そして…


「秀也君ってお酒呑めるの?」

先日、外出許可をもらい明日から巡察に同行することが決まった千鶴が、私に笑顔で隣にいた。

『あぁ、呑めるよ。あの3人組みたいに派手には呑まないけどね。千鶴は?』

まだ酒を呑んだわけではないのに、賑やかに話している平助達を見ながら言った。

「私は呑めないんだ。お料理だけ楽しむつもりだよ。でも意外だなぁ、色街行ったことないんだね」

『い、意外だなぁって。俺って通ってそうに見えるのか?』

私はこの子にどんなような人だと思われているのだろうか。

「だ、だって…」

千鶴は少し顔を背けて、言葉を詰まらせる。

「そりゃ、お前ぐらいの容姿だったら通っててもおかしくないようにみえるってことだろ」

いつのまにか近くにいた原田が横から声をかけてくる。

何度も思うが、私は女だ。女に興味などない…。

今の言い方的に、私は女たらしに見えるということか?

『それ、左之さんには言われたくないなー』

なんて言いながら、私たちは出かけることになった。



次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ