Fragment of SAKURA
□08 実力
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出陣した人達を待っていると、山崎が1人慌てた様子で帰ってきた。
「報告します。敵の会合場所が池田屋と判明致しました」
「それは困りましたねぇ…。新選組は賭けが弱いようです。」
本命を四国屋だと思っていたため、人員を割いた近藤率いる組は人数が少ないのだ。
山南はちらりと、こちらを見ると山崎に視線を戻す。
「山崎君、まずは土方君に本命が池田屋だということを伝えてください。その時に…雪村君も同行させてください。」
「っ!お言葉ですが、伝令は私1人で十分です。」
私も山崎と同意見だ、なぜ千鶴を同行させるのだ?
『山南さん。俺が代わりに出ます。』
「秀也君は直接池田屋へ向かっていたただき、加勢をお願いします。
雪村君を同行させるのは、もしかしたら伝令途中に敵と鉢合わせるかもしれません。
そのときに山崎君が足止めし、その隙に彼女をだけでも走らせてほしいのです」
山南の提案に、すぐに頷くことは出来なかったが、今はそれが最善なのだろう。
山崎も御意と一言いうと、千鶴を来いと命令する。
『千鶴ちゃん、無理するなよ?』
そう言って、山崎君に頼むと目配せすると、彼も答えるように頷いて、二人は走り出した。
その姿を見てから私も池田屋の方へ走り出した。
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全力で走り出して、池田屋のそばまで来ると、金属と金属が打ち付け合う音が響いてきた。
『ここか!』
既に戦闘は始まっていた。
「ちっ、援軍はまだか!」
永倉の苦しそうな声が聞こえる。
建物に入ると、特有の臭いが鼻を抉る…。
思わず顔を顰めるが、そんな場合じゃない。入口近くで刀を交えていた永倉に加勢する。
永倉の背後から切りかかろうとする人に一太刀食らわしてやる。
肉を切り裂く感覚を、生々しく感じながら、切り伏せる。
「おっ、やっと援軍か?」
『すいません、俺1人です。山崎君が今呼びに行ってます。』
「そうか…って!お前、秀也か?!」
私だと思わなかったらしい、永倉は少し息が上がっているが、無事のようだ。
『俺じゃ頼りないですか?』
「いいや!ありがとよ、助かったぜ」
背中合わせとなった形で、永倉は私の背中を軽く肘で突く。
そう言われてなんだか安心し、一瞬力が抜けたが、また刀を構え直す。
『援軍が来るまでに片付けちゃいましょうか』
「おう、そうだな!よっしゃ気合いれていくぜ!」
その声と共に私も永倉に続くように、建物の奥へと進む。
そこで切り伏せている近藤の姿も発見する。
『局長!援軍はもうすぐ来ます』
「そうか、伝令ご苦労…って!北村君か!」
『驚きすぎですよ、どこに向かえばいいですか?』
「一階は任せてくれ、二階に総司と平助がいる。あの2人だから大丈夫だとは思うが加勢してきてくれ」
『御意!』
命を受けて、一気に階段を駆け上がる。
前から勢いよく切りかかってきた奴を、瞬時に交わすと心臓目掛けて刀を突き刺す。
相手の力が抜けたのを確認すると、勢い良く抜き、階段を登りきる。
ふと、見渡すと、目に映ったのは沖田が倒れこんでいるところだった。
『っ!』
その部屋に向かうと、そこには1人の隊士が切り伏せられていた。
(…!出血がひどい…助からないか…)
目の前に見えたのは、咳き込みながら向き合う沖田と、金髪の風格のある男だった。