Fragment of SAKURA

□09 後悔
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その日、屋根に激しい雨が叩きつけ、静かな夜のはずが騒がしいものだった。

久しぶりの大雨だった。


原田は、夜が非番だったが生憎の雨で外には出られないので、猪口2つと徳利抱えてあいつがいるであろう縁側に向う。

池田屋の一件で名をあげた新選組は、活気を見せつつあるが、沖田は安静って部屋に籠らさせてるし、藤堂も消毒時に傷口が染み叫んでるほどだし、平隊士も1人死亡、2人重症という結果。

ついでに、秀也もあの日からどこかおかしい。
話だけでも聞いてやろうと思って来たのだが…。

いつもいるはずの姿はどこにもない。

風呂でもない、道場でもない、んでこの縁側でもない。

「…あいつどこに?」

こんな雨だから外に出るはずもないし、一体どこに行きやがったんだ?

と、思い縁側付近を見ると、なんと秀也の草履がないではないか。

なぜか嫌な予感がして、その場に徳利と猪口を置くと原田は傘を指して外に出ることにした。

自然と早足になりつつ、屯所から出ようとする時だった、ふと、蔵のほうに人影が見えたのだ。

今度は、少し気配を消しながら蔵のほうへと足を進めていく。


「…はっ?お前!なにやってんだ!」


そこにはずぶ濡れになった秀也が立っていた。

ただ空を見上げ、目をつぶって、立っている。
いつからこんな場所にいたのか。着物はずぶ濡れで雫が垂れているし、長い髪も額にひっついている。

原田の声に気づいた秀也は、ゆっくりと目を開けて、そして、こちらを見て、小さく笑った。

その姿に、原田は息を飲んだ。

いつもの姿じゃない気がした。
心臓が早く打ち始め、思わず目を離せなくなる。
艶やかな笑顔と、ずぶ濡れな姿に俺はどうかしてしまったのか、男相手に変な気が起きちまいそうだ。と原田焦る一方だった。

『…左之さん、俺に…用事?』

弱々しい小声で、秀也は原田に問う。

驚きのあまり、直ぐに動き出せなかったが、原田は秀也の手を強引に掴むと、近くにある蔵まで引っ張る。

「お前!なに考えてんだ!風邪ひいちまうだろうが!」

珍しく怒鳴る原田に、今度は秀也が驚いていた。

『…雨にあたりたかっただけ。別に…ほっとおいてくれてよかっ』

「よくねぇよ、なんかあったのかよ。お前、最近おかしいぞ」

腰を低くして、秀也の背に合わせて原田は尋ねるが、秀也はふいと顔を背けるだけだった。

「…なんだよ、俺には言えねえことなのかよ」

不貞腐れたように、言葉を吐いた原田に一瞬何か言い出そうと、振り返る秀也だったが、

『…ちが…う』

小さくつぶやくように言っただけだった。

「じゃぁ、話してくれよ。俺はお前が心配だったんだ」

『…それは、俺が隊士だからか?』

「あぁ?」

『…それは組長として部下を気遣ってるだけなのか?』

「どういう意味だよ…っておい!」

原田の横からスルリとその場から抜け出す秀也。

逃げようとするその小さな肩を原田は逃がさない。

肩をつかんで、引っ張り戻すと秀也を壁に追いやったのだ。


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突然の原田の訪問、展開に驚き、目を閉じた。

気づけば私は壁に追い詰められた状態、肩を壁に押し付けられ、目の前には、怒った眼差しで見る原田がいる。

その状況に、少しばかり恐怖感を抱き、目の前にいる目を逸らしてしまう。

意を決して、口にすることにした。
私の思いを言葉に…
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