Fragment of SAKURA
□03 糧調べ
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土方が出ていくと、続いて近藤、山南と続く。
私はというと、組長軍団に囲まれていた。
口々にいろいろと問われるんだけど、どの質問に答えたらいいのか全くわからない。
私があたふたしているのがわからないのか、一向に質問攻め。(ほとんどどうでもいいものばかり)
それよりも、副長、局長、総長が出て行ったのに、君達はここにいていいのかな?
「まっ、いろいろはゆっくり聞いていくことにするか。」
ふいに、原田が私の頭に手を置くと無造作に髪をくしゃくしゃにする。
さっきまで背の高いしかも整った顔が、頭上にあったのに、私の顔の高さまで彼は屈んでいて、今は目の前にあるものだから、私の顔は真っ赤に染まった。
『ちょっ!原田さん顔近い近い!』
完全に子供扱いされているし、頭撫でられるなんて慣れてないから、つい慌てて言ってしまう。
「ははは、お前、何焦ってんだよ。あ、そういえばなんて呼べばいい?
俺は平助でいいよ。みんな平助って呼ぶし、年も近いんだろうしさ!
藤堂さんだけは気持ち悪いからやめてくれよ」
『…へ、平助さん』
「なっ!なんで"さん"付けるんだよ!平助でいいって!」
「んじゃ、俺は"永倉様"でいいぞ!"様"だ"様"!」
「…新八、その辺にしとけって。こんな奴"様"なんて呼ばねえでいいぞ。俺は、左之でいいぜ。」
『平助とは、年はまだ近いと思うけど、お二人は新八さん、左之さんでよろしいですか?』
「じゃぁ、僕も下の名前で呼んでね。
年のことなんてどうだっていいし。
君のことも名前で呼ぶしさ。」
「俺は、別にどう呼んでもらってもかまわぬ」
『え、総司さんってことですか?なんか俺、貴方達2人は、沖田さん、斎藤さんと呼ぶつもりでした。』
「ふーん、まぁなんでもいいけどね」
『俺は、北村でも秀也でも構いませんので、好きなほうをお呼び下さい。』
一旦、話がまとまるとひょっこり体を乗り出して、井上がヒソヒソと言葉を言う。
「そろそろ戻らないと。副長の雷が落ちるぞ」
「あっ、やっべ! じゃぁなまた後でな秀也!」
平助が1番に走り出しその後をぞろぞろと幹部達は追う。
出でいく間際に斎藤は私に振り返った。
「秀也、また後日手合わせ願う。」
『あ、はい。よろしければお願いします』
あぁと言うその顔は、先ほどの睨みっぱなしの顔とは思えないぐらい明るいものだった。
(へぇ。斎藤さんってあんな顔もするんだな)
みんなが戻った後、井上に連れられて私は部屋に戻ることになった。
私の処遇は決まったが、もう一人の少女についての処遇まだであるため、私と入れ替わるように、その少女は井上さんに連れられてまた広間に戻っていった。
部屋に残されたのは、山崎と言われた忍びの格好をした人だけだった。
『あの入隊することになった、北村 秀也です。』
「俺は監察方の 山崎 烝。
役職故、俺はあんたを信じないが、
副長の命がある限り俺はあんたにちゃんと協力する」
監察方ってのは、たぶん隊の監視してる人達のことだろう。
必要事項以外は話さないっと言ったところか、山崎は無駄な話は一切しない様子だったので私もそれを察して、大きく縦に頷く。
いつ運んだのか知らないが、部屋の隅には私の荷物が置かれていた。
刀を手に取り腰に指すと山崎は警戒体勢に入ったので、
『これ、形見だから。腰に指してると落ち着くんだよ。』
だから何もしないよと、弁解をすると彼は構えを解く。
それから話し合いが終わる間、およそ四半刻経つまで、私は外の空を見上げていた。