Fragment of SAKURA

□03 糧調べ
2ページ/6ページ

土方が出ていくと、続いて近藤、山南と続く。

私はというと、組長軍団に囲まれていた。

口々にいろいろと問われるんだけど、どの質問に答えたらいいのか全くわからない。

私があたふたしているのがわからないのか、一向に質問攻め。(ほとんどどうでもいいものばかり)

それよりも、副長、局長、総長が出て行ったのに、君達はここにいていいのかな?

「まっ、いろいろはゆっくり聞いていくことにするか。」

ふいに、原田が私の頭に手を置くと無造作に髪をくしゃくしゃにする。

さっきまで背の高いしかも整った顔が、頭上にあったのに、私の顔の高さまで彼は屈んでいて、今は目の前にあるものだから、私の顔は真っ赤に染まった。

『ちょっ!原田さん顔近い近い!』

完全に子供扱いされているし、頭撫でられるなんて慣れてないから、つい慌てて言ってしまう。

「ははは、お前、何焦ってんだよ。あ、そういえばなんて呼べばいい?
俺は平助でいいよ。みんな平助って呼ぶし、年も近いんだろうしさ!
藤堂さんだけは気持ち悪いからやめてくれよ」

『…へ、平助さん』

「なっ!なんで"さん"付けるんだよ!平助でいいって!」

「んじゃ、俺は"永倉様"でいいぞ!"様"だ"様"!」

「…新八、その辺にしとけって。こんな奴"様"なんて呼ばねえでいいぞ。俺は、左之でいいぜ。」

『平助とは、年はまだ近いと思うけど、お二人は新八さん、左之さんでよろしいですか?』

「じゃぁ、僕も下の名前で呼んでね。
年のことなんてどうだっていいし。
君のことも名前で呼ぶしさ。」

「俺は、別にどう呼んでもらってもかまわぬ」

『え、総司さんってことですか?なんか俺、貴方達2人は、沖田さん、斎藤さんと呼ぶつもりでした。』

「ふーん、まぁなんでもいいけどね」

『俺は、北村でも秀也でも構いませんので、好きなほうをお呼び下さい。』

一旦、話がまとまるとひょっこり体を乗り出して、井上がヒソヒソと言葉を言う。

「そろそろ戻らないと。副長の雷が落ちるぞ」

「あっ、やっべ! じゃぁなまた後でな秀也!」

平助が1番に走り出しその後をぞろぞろと幹部達は追う。

出でいく間際に斎藤は私に振り返った。

「秀也、また後日手合わせ願う。」

『あ、はい。よろしければお願いします』

あぁと言うその顔は、先ほどの睨みっぱなしの顔とは思えないぐらい明るいものだった。

(へぇ。斎藤さんってあんな顔もするんだな)

みんなが戻った後、井上に連れられて私は部屋に戻ることになった。

私の処遇は決まったが、もう一人の少女についての処遇まだであるため、私と入れ替わるように、その少女は井上さんに連れられてまた広間に戻っていった。

部屋に残されたのは、山崎と言われた忍びの格好をした人だけだった。


『あの入隊することになった、北村 秀也です。』

「俺は監察方の 山崎 烝。
役職故、俺はあんたを信じないが、
副長の命がある限り俺はあんたにちゃんと協力する」

監察方ってのは、たぶん隊の監視してる人達のことだろう。

必要事項以外は話さないっと言ったところか、山崎は無駄な話は一切しない様子だったので私もそれを察して、大きく縦に頷く。

いつ運んだのか知らないが、部屋の隅には私の荷物が置かれていた。

刀を手に取り腰に指すと山崎は警戒体勢に入ったので、

『これ、形見だから。腰に指してると落ち着くんだよ。』

だから何もしないよと、弁解をすると彼は構えを解く。

それから話し合いが終わる間、およそ四半刻経つまで、私は外の空を見上げていた。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ