いち
□ごきげんなかわいい子
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L.Joe…イ・ビョンホン。韓流スター級の名前を持ったアメリカ帰り。
それから想像する通りの姿、ステージの上では、カリスマ溢れる目付きをするけど。
「あ〜、ははっ」
ふざける弟たちを見ながら、ふにゃふにゃした顔で笑って。
最初にどんなやつかと思って身構えたのが懐かしい。こんな顔するような人間だとは思わなかった。
「ふふ、」
(今日はごきげんエルジョ。またふにゃふにゃ笑って、…かわいい)
いや、そうじゃなくて。
「エルジョヒョン〜」
「ん〜」
アン・ダニエル…くっつきすぎ。別に、いいんだけど。当の本人がごきげんだし。俺がどうこう言えることじゃない…から。
「わ、やっぱり細いですね」
あ。腰、掴んだ。ちくしょー、ちっとも嫌がってないじゃんか。
「お前こそ」
「俺の方がヒョンよりマシだ、身長があるから」
「なんだと!」
「あーあー!ごめんなさい!!ごめんなさいって、ほんとに!!」
きつく睨まれて脅されるアン・ダニエルに内心、ざまあみろと思った。
「どうしたの、さっきまでごきげんだったのに」
「チャニ…」
声をかけたら、小さく俺の名前を呼ぶウリビョンホニ。唇がきゅっと閉じた。完全に拗ねちゃったな、これは。
「…ニエリ、ちゃんと謝れ」
「謝ったよ!」
「よ?」
「謝り…ました」
まずいのに捕まった、とでも思ってるのか、しおらしくなった。ビョンホンはその変わりように笑っている。じゃあ、こいつをどうさせようか、マイエンジェル?
「チャニ、もういいよ」
「…そう?」
お。慈悲深い俺の天使。俺きっとお前のためなら、なんだってさせるのにな。
「ニエリだってもうわかっただろ」
「よくわかりました!もう言いません!」
「よし」
「もうエルジョヒョンがチビだなんて言いません!」
「っ…このやろう!」
「ぎゃぁああ!!」
逃げるアン・ダニエル。…なにこれ、なに、このコント。
「チョンジヒョン、あれあれ」
成長著しいウリマンネがそっと俺に教えてくれたのは、チャンヒョンが回すハンディカムの存在。
ああ、だから、活動名のほうで呼んでたのか。だから「エルジョ」は、あそこで止めさせてニエリを許したのか。
「あー、ほんとにあいつ…」
何となしに俺のそばに来たのは、「エルジョ」じゃなくて「イ・ビョンホン」で。
イライラしたような、ちょっと荒い足取り。ヒヨコが威勢を張っても可愛いだけだと思ったけど、黙っておいた。
「知っててああやってたのか」
「おー。気付かなかったの?」
「…うん。お前しか見てなかった」
「ちょ、バカっ…!なに、もう、…」
俺から目を逸らして、手ではバシバシ俺を叩く。怒りながら照れるのが可愛くて、叩く手を掴んで、引き寄せて抱きしめた。
「あ!ヒョン達、何してるんですかー!」
「撮るな!」
「え?」
許さない、絶対駄目だ、こんな表情のビョンホンは絶対公開するべきじゃない。
「チャニヤ、ちょっと、くるしい…」
「ビョンホナ、顔隠して!真っ赤だよ」
「っ…//ばか、撮るなよっ」
ぎゅうぎゅう抱きしめて隠しながら、俺の一言でこんな風に照れてくれるのが嬉しくて、表情管理がままならない。
そんな俺をよそに、面白がってリッキーからカメラを奪ってまで撮ろうとしてくるニエルに、俺の腕の中で「覚えとけよ」と言い放ってた。
「あいつは俺がどうにかしとくから…?」
( ……。)
「な…なんだよ〜、そんな、見るなよ」
…なにその口。
口角は上がってるのに、今怒ってるからって下げようとして、変なかたち。
いや、俺の目には全然少しも変じゃなくてただただ、何ていうか、ほんとに、…
「かわいいなこいつ…っ」
「わ、ちょっ、苦しい、苦しいって!」
「素直に笑えばいいのに!嬉しいんだろ?ん?」
「なにがだよ!あっは!やめろって!」
強く抱きしめたあと、顔を覗き込みながら髪をくしゃくしゃ撫でたらやっと力の抜けた笑顔になった。
「かわいいな〜、よ〜しよし」
「かわいいかわいい言うなよ、そっちこそ、だろ?」
「俺がかわいいって?まぁそれはいいんだ、知ってる」
「うわぁ…なんてやつ」
口をぽかんと開けてそう言ったビョンホンと目を合わせて、少し黙って、それから同時に笑った。
「そっちが言うから〜!」
「否定するかと思った」
「したほうが良かったみたいだ」
「いや、正しいよ。イ・チャンヒ、君はかわいい」
「は?…ちょっ、照れる!やめろ!!」
「復讐、復讐!」
そう言って悪戯っぽく笑った顔も、声も、お前がずっとかわいいけど、それはもしかしたら、欲目かもしれないから。
とりあえず一緒に笑っておこうかな。その方がいいよね。だってそうすればきっとまた、ごきげんエルジョに会える。
…俺にも本人にも、ついでに弟たちにも嬉しいことだろうし。
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