いち

□All I want
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見つからないように、そっと。誰にも見られずに出かけるつもりだった。


「…どこ行くんだよ」

は、バレた。バン・ミンス。一番バレたくない相手だ。

「ちょっと、コンビニ?」

「そんな気合いれて?」

「あぁ、これ?新しく買ったから着たくて」

なんて、わざとらしく。

「コンビニいくのに香水まで?」

「…へぇ、随分鼻がきくんだな、ヒョンって」

この男がまた、俺が遊びに行くのをどうしてそんなに気にする?

「答えろよ、どこ行くんだよ?」

「関係ないよ、ヒョンには」

肩に置かれた手を振り払って、ミンスヒョンを一瞥して。
もう行かなきゃって。特に約束もないけど。

「…いいから、俺の部屋に来て」

半ば睨むような目で、静かに言われる。
俺は出かける予定を取りやめて、黙って従うんだ。こんなやり取りはもう、初めてじゃない。



「ヒョン、何回言ったらわかるの、俺は出かける予定で…っ」

「お前こそ、何回言ったらわかる?もうやめろって」

「いっ、た…」

いくらベッドでも、そんなに強く倒されたら痛いのに。本当に。

「どうして足りない?そんなに好きか?俺には理解できない」

「…どうせわかんないよ、あんたには」

こうやって少し反抗すると、ひんむくみたいに服を脱がすから。
ちぇ、新品のシャツが台無しだ。せっかく着たのに、出かけもしないでこの人に脱がされるだけ。
ごめんよ…、でも俺はほんとさ、これでいいんだ。



認めたくないけど、ずっと好きだったみたいだ。
正反対の態度ばかりとってて、俺なんてきっとミンスヒョンには可愛く見られなかったと思う。

馬鹿みたいだけど、寂しくて遊び始めて。
そしたら俺よりずっと歳上の人はみんな、俺を可愛いって言ってくれるんだよ。それが好きで続けてたんだ。
可愛いだの好きだの言われたら嬉しくて、求められるまま、色々…、あぁ、そう、もう、今考えたら本当に馬鹿だったと思うけど。

ねぇ、バン・ミンス。どうしたらいい?あんたが俺を悩ませるせいで俺…こういうこと、やめられなくなっちゃったよ。


「なんで最初から俺のとこに来ないんだよ」

「別に…悪いと思ってさ」

仮にも好きな相手に、そんな頻繁に、ヤりたい、なんて言える?

「俺が嫌々やってるとでも思ってるの、お前」

「じゃあ逆に、ヒョンが好きでやってるとでも言うの?」

そうだとしたらそれって、俺を?それとも…

「…この匂い、嫌い」

「へぇ、そう」

首もとにつけた香水、あぁそれ、こないだ寝た人にもらったんだ。
そう言ったら、ヒョンはどう思うの、ねぇ。

「二度とつけないで」

「っ、ん、…、」

首もと、耳…、ゆっくり這う舌に、ときどきたてられる歯に、思考が止まりそうになる。
びりびり痺れるような、溶けるような、とにかく熱くて。
俺がどんだけこの人が好きか。実感するのはこういうときだったりする。

実はもう、おかしくなりそうなんだよ。
ヒョンとするのがこんなにいいのに、それが明らかなのに、足りなくて。他でもいいって思うから。
誰かと寝るたび、虚しくて、何か精神がすり減っていくように感じる。
ヒョンがいつもいつも、こうしてくれたら本当にいいのに。



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