いち
□All I want
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「は、っぁ、…ヒョン…」
「やめろよ、その声」
甘くヒョンを呼ぶのが駄目みたいだ。媚びるみたいなこの声が、ヒョンは大嫌いみたいなんだ。
「…なんで、?」
「誰にでもそうやって甘えた声出してんだろ…」
俺が一番素直に出した声がこんな風に言われるのは、全部自分のせい。正に自業自得。
でも間違ってないね、その通りなんだから仕方ないよね。そうするとみんな喜ぶんだよ。
「っあ、ヒョン、待っ…、!」
肩に強めにたてられた歯、俺の太腿を撫でる手。こうされると、感じすぎてくらくらする。
誰にでもこうなわけじゃないんだって。ただバン・ミンスの歯が皮膚越しに俺の骨に当たるのが良くて、バン・ミンスの指が太腿を触るのが良くてこうなるんだって。
「…クソアマ」
こんな、とても似合わない汚い言葉をかけられるのは、俺の反応が目に見えたときだけ。
「ヒョン…っそれ、サイテーでしょ」
「何十人に抱かれてるお前よりマシ。」
「…ふ、は」
「なにがおかしいんだよ」
ヒョンが、他の男と寝た俺を嫌うから、もしかしてそれが、嫉妬なんじゃないかって。
そんな勘違いをして舞い上がる俺が馬鹿みたいに思えた、から。
「そんなのどうでもいいじゃん、ね」
「なぁチャニ、黙ってられないの、お前って」
「…黙らせてくれたら黙る」
「っ、…、」
名前を呼ばれたらそれが嬉しくて、つい頭を引き寄せてキス、しちゃったんだけど。
俺たちはこんな風に熱くキスをする仲ではない、だろう、多分。
ヒョンはそんなつもりでこうしてるんじゃないのに、自分だけが必死みたいで、恥ずかしくなって。
唇を離したら、少し沈黙。
「…、いつも、こうやって誘うんですよ、俺」
あぁ、イ・チャンヒ。なんて馬鹿なんだ、お前。
わざとヒョンに嫌われるようにして、どうしてこんな風に自分から遠ざけるんだよ。
「そーかよ、…」
「、ぅ…あっ、ヤバイって、ヒョン、っ…」
「…黙って」
パンツに手を突っ込んで俺のを直接握り込んで、乱暴に扱くヒョン。
ねぇ、怒った?軽蔑した?
ヒョン、こんな俺とは恋愛はできない?そうだろうね、誰だってこんなやつとは付き合いたくないだろうから。
こんな、誰にでも抱かれるようなやつ。
はは、悲しくなってきたじゃん、馬鹿。どうしよう。
「っふ、ぅ、…っ、は…」
「、なんだよ、お前…泣くほどイイのか?」
なにそれ、馬鹿みたい。
「、そうだよ…、だから、っ…、もっとしてよ、…っ」
泣きながらヒョンの肩にしがみついて、言ってることは本心なのに嘘だからもうよくわかんなくて。
「…くそっ、」
「っあ、ぁあ…!」
あぁ、バン・ミンス、また噛み付いたな。痛いよ。俺の肌にいくつ歯型を残したら気が済む?
身体中あんたの痕でいっぱいなんて、嬉しくてどうにかなりそうだよ、俺…。
「脱いで、こっち向けて」
「ヒョンが脱がせて」
「…お前がいつも寝てるようなやつと一緒にするなよ」
「だから、今日はそういうことしてくれる人と会うつもりだったのに」
ヒョンが止めたんだ。
最後まで面倒みてよ、お願い。
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