いち
□素直にお願い
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ぱっと手を出して、顔を見ても。言わないとわからないか、バンミンス。
「ヒョン、プレゼントは?」
「…あー」
ないのね、はいはい。
「あぁ、やっぱり!期待してなかったけど!」
そう、してなかった、してなかったよ、ほんとだって。
「いやー、ほら、な、ここんとこいろいろバタバタしてたし…」
前に出した俺の手を掴んで言い訳し出すミンスヒョン。そんな風に手を握られたってごまかされないぞ。
「もーいいからなんか奢ってよ」
モノじゃなくてもいいから、奢ってよ。ヒョンと一緒にご飯食べるなんてそんなレアなイベント、誕生日にくらいあってもいいでしょ。
「奢るって言ってもなー…」
なんか、気が進まなさそうだけど、なにそれ。
「嫌なんだ?」
くそ、ばかやろう。こんな質問させんな。
「嫌ってわけじゃないんだけど」
「けど、なに」
ヒョンを問い詰めてるみたいで、なんか自分がイヤだ。
掴まれてた手が離されて、もう…。
うわ、ミンスヒョンに嫌われた?やばい、そんなのって、
「見てみ、腕」
「…へ?」
なに、これ?…ブレスレット?
「HAHAHA!馬鹿だな、誰より心の温かいこの俺が、弟の誕生日にプレゼントを準備してないわけな」
「は?サイズ合わなすぎ。ゆるすぎてつけられたの気づかなかったわ」
「って、聞けよ。サイズはしょーがないだろ、チャニの腕が細すぎんだよ。太れ」
「俺に合ったもの買ってよプレゼントなんだからさ」
しかも調節もできないじゃん、サイテー。
全く、こんなんじゃつけられないだろ…。落としたらどうするんだよ。
ヒョンからの、せっかくミンスヒョンからのプレゼント、なのに。
「気に入らないならいいよ、つけなくて」
「…ふーん、売っていい?」
「勝手にしろ、…かわいくない」
悪かったな、かわいくなくて。
つーか、言ったものの、売れないよな、こんなの。
「安っぽいし、売れなさそう」
ヒョンからもらったもの、まさか、売れない。
「はー、お前は、いつも憎まれ口ばっか叩いて」
「しょうがないからつけてよ…」
「…え、チャニ?」
「ゆるくていつ落とすかわかんないけど、そしたらまた買ってね」
「は?なんで、」
「クリスマスでいいよ、またくれるでしょ」
今度はもっと、ちゃんと俺の腕にフィットするやつ希望!いつでも離れないように、ぴたっと。
「バカ、その前に俺の誕生日」
「なにそれプレゼントの催促?」
「くれるだろ、俺あげたんだから」
「うんー考えとくー」
「生返事やめろよ、くれるんだろーチャニヤーなぁー」
え、ヒョン、俺からのプレゼントなんて、ほしいの?
そんなの、俺、張り切るけど。張り切って選ぶ、けど。
「何がいいの」
「なんでも。飯奢ってくれるとかでもいいし」
ヒョンに?俺が?
それって、二人でご飯食べ行くってことだよな…それって、デート…なんじゃ…
「いいけど、誕生日当日に限る」
「え、奢ってくれんの?全然、当日でいいけど」
誕生日に、デート!
恋人じゃん、そんなの。どうしよ、俺、どんどん欲が出てくる。
「その代わりさ…クリスマスは奢ってくれるよね」
「は!そういうことか!…まぁ、いいよ。その頃になったらチャニも忘れてるだろうし」
「残念、忘れません」
忘れません、クリスマスにデートなんて。
もう、それも恋人じゃん。してることが恋人。
「ってかとりあえず俺の誕生日な、忘れるなよ」
「忘れないって。何がいいの?」
「奢ってもらって文句は言いません!なんでもいい。」
「あっそ、でもクリスマスは俺の希望きいてくれんでしょ?」
「…ちっ、いいよ、考えといて」
希望ね。あ、何食べるかなんてのは俺もなんでもいいんだけど。
このまま、ヒョン、俺を恋人にしてくれたらいいのに。って。
そういう希望は、駄目かな…。
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