いち
□Love Fool
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結局二人で深夜に出て来たのは、ごく普通のお店。タッカルビを炭火で焼いて、ちょっと飲みながら。
「で?一応言い訳聞くよ」
「何の話だよ?」
「こんな時間になった言い訳だよ、誕生日当日って約束だったのに」
「忙しかっただろ」
「チャンスはあった!」
確かにみんなでいたけど、俺たち二人で抜け出すチャンスはたくさんあったよ、みんなに話して出てもよかったじゃん。
「いいじゃん、寝るまで今日だ」
「…あー、そうですか。」
後回し、ってね。せつねー…。
「あと、チャニは最後がよかった」
「…え?」
「最後って重要だろ。何事も、終わり良ければって」
重要?俺がよかった?
どうしてって考えると、自分に都合のいいようにしか解釈できない。
イ・チャンヒが少しはヒョンにとって、大事な人間だったりすんのかな…なんて。
あぁ、目の前のミンスヒョンがはっきり見える。全然酔ってない?違うな、俺がじっと見つめてるから。
酔ってないわけある?ないね。
ヒョンと二人きりで、深夜に、こんな風に抜け出して、まるで恋人みたいに。こんなこと言われて。
もうなんかふわふわ、気持ちいいよ。
「ミンスヒョン?」
「んー」
「あのさ、ヒョンって、なんで今俺とこうしてるの?」
「は?俺の誕生日だから?」
「そうだけど!どうして誕生日にこう、二人でご飯食べきてんの?」
もう誕生日じゃないけど。日付的には、とっくに過ぎてるけど。
「…お前が言い出したんじゃなかった?」
「せーいかい!」
「なんだよ、酔ったか?」
酔ったよ、ヒョンといると、俺はもうアルコールとヒョンで、すぐ酔っぱらっちゃう。どうしよ!
「なんで俺がそう言ったか、わかる?」
「なんでー…?理由とかはわかんないけど。でもなんかあれだよな、俺たちしてることがまるで」
「恋人同士みたい?」
「あはは、それ」
なんで笑うか。俺は真面目だ。
あっ、ヒョン、その笑った顔見て今思ったんだけどさ。俺、ミンスヒョンのことすげー好きだよ。
ずっとなんとなく感じてはいたんだけど、はっきり。だからもう言いたくなった。
「愛してるってさ、あれ、本気。ほんとに恋人になるのって、どう?」
「…え?」
「なろうよ、なりたい…」
「そーれってー…俺とチャニが、ってことだよ、な?」
「あぁ〜、飲みこみが早いじゃないですか、珍しく〜」
んでも困ったな…何言ってんだよってヒョンに笑われて、冗談って思われて気にされずに終わりって予定だったのに。あれー…?
なんでそんな真面目な顔で俺を見てるの?
やめてよ、笑って流してよ、いらないから、ごめんとかそういうの。
「チャニ…俺、」
「あーー!いいです、俺傷つくのキライ!やだ!今の冗談!」
「おい、チャニ」
「やーだって、」
「聞けって」
「やだ…っ、」
なんで?あれ?
なんで、バンミンスから顔を背けたのに、目の前に見えるの?分身した?
俺の顔を挟んでるのがミンスヒョンの手?あ、無理やり戻されたのか、なるほど。
「チャニ、俺が言おうとしてたのになんで言うんだ」
「…へ?」
「チャニがよければ。恋人になるのってどう、俺たち」
「…は?」
「おい、聞け、こら、人がせっかく」
なんで?全然わかんない。あれ?
ミンスヒョンなんでそういうこと言うの?俺がよければ?俺があんたを好きなのなんてわかってたんじゃない?
「ヒョン、馬鹿なの?」
「…あー、馬鹿かも。今男に告白してる」
「馬鹿だよ」
「うるせー」
「わかんないの?俺はずっと、ヒョンの恋人になりたくて、なったみたいで嬉しくて毎日これつけてたのに…」
これ超大変なんだからな、落とさないようにするの。
俺の腕にはゆるすぎんのに、デザインだって趣味じゃないのに、それでもずっとつけてたのは、ただヒョンが好きだからなのに。
わかってなかったなんて、思ったより馬鹿だ、ずっと馬鹿だ。
「…じゃあ、なくせよ。クリスマスは合うやつ買ってやる」
は?ヒョンにもらったものをなくせって?これが俺にとってどれだけ大事かわかってない?やっぱり馬鹿だ。
「次は…指輪がいい。」
この馬鹿な男を恋人にするんだから、やっぱり俺が馬鹿だ。
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