いち
□"元彼"の価値?
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「あーー…」
わかるよ。もう長いことこの人だけ見つめてきた俺だから。
始めは何を考えてるか全くわからなかったけど、最近はわりとわかるようになってきた。
わかりたくないようなことまで。
当ててみようか。今のこのニエリヒョンの表情はね、きっと元彼のこと考えてる。
さて、じゃあ次は、いっぱいいる元彼の中の、何番目のやつのことだ?
今ヒョンは、ベッドに仰向けに寝て、爪を見上げてる。爪を。…ピンときた。
きっとあいつだね。ほら、すぐわかっちゃった。
「…ニエリヒョン、俺とベッドにいるときは、ミンスヒョンのこと考えないでって言ってるよね」
「わーお。なんでわかったの?すご。チェジョンヒョンってば、てんさーい」
いつも通りの軽い返事に、溜め息。はいはいわかってるよ。
多分これって、別れ話になってもいいぐらいの問題なんだろうけど。
俺たちにしたら、日常会話だよね、ヒョン?
「爪、伸びたね」
隣に俺も寝っ転がって、一緒にヒョンの手を見上げる。
「んー。切んなきゃ…」
ニエリヒョンの視線を独り占めしてる憎いその手を捕まえて、指を絡めた。
ニエリヒョンが爪を噛むのを、いつも元彼が止めたんだって。お前の長い指が好きだっていつも言ってたんだって。
"元彼"のミンスヒョンが、いつも。
「いつになったら忘れるの」
「忘れる?はは、それは無理だね〜。多分、一生」
あんまりにも強く焼き付けられた記憶だから。って。
ずるいなと何度も思った。
指なんて、爪なんて、何してたって目に入る。見るたびいつでも思い出すだろうね、ニエリヒョンはあの人のこと。
この人がこんなにミンスヒョンのことばかり思い出してるって、当の本人は知らない。
あぁ、俺のニエリヒョンは本当に演技がお上手ですね。ミンスヒョンの前に出ると、そんな素振り全く見せないんだから。
教えてやりたい。
いや、ヨリを戻されたら困るから、絶対に言わないけど。
もうあの人には譲りたくない。ニエリヒョンがまた俺を選んでくれたから。
もう、"元彼"なんてものになるのはごめんだよ。
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