いち
□"元彼"の価値?
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実は、俺とニエリヒョンが「恋人同士」という、とてもとてもこの上なく甘ーい関係になったのは、これが1度目ではないのである。
何年前だったか。ヒョンが好きで好きでどうしようもなくなって、勢いに任せてした1度目の告白。
「いいよ、付き合おっか」
至極あっさりとしていて、軽い返事だった。
拍子抜けした俺に、突然、キスをしてきたヒョン。
ああ今でも鮮明に覚えてるあの感触 ……………
だけどそう、その時も既に、ミンスヒョンはこの人の"元彼"だった。
もちろん、俺は側で見てきてたから、付き合ってるってことは知ってたよ。
だからこそ告白だって、ダメもとだったわけで。
初めてヒョンとキスしたあと、ロマンティックな言葉のひとつでも言えばよかったのに、俺の第一声目。
「…あれ、み、ミンスヒョンは?」
最低だ…
俺これは一生悔やむかも。
「うん?別れたよ」
「あ、そうなんだ…」
「知ってて告白したんじゃないの」
「いや…うん…」
知らなかった。
本当に俺はなんにも知らなかった。
ふたりが別れたっていうのも、恋人同士の言う「別れた」の軽さってやつも。
ケンカして1週間やそこら口をきかなかっただけで、別れたと言うんだって。
ニエリヒョンひとりに愛を向けてきた俺に、そんなことを学ぶ機会があったと思う?
やっとヒョンが俺のものになったと思った。ずっと望んできた甘い甘い関係。
このままでいられたら死ぬほど幸せだと思ったのに。
一ヶ月かそこらでまた、あっさりと言うヒョン。
「あのさ、ミンスヒョンとやり直すことにした。ごめんね」
「えっ…?」
耳を疑った。
「こないだ別れたって言ったのもそんな深刻なやつじゃなかったし。なんか、やっぱりもう一回やり直そうって。」
はい?別れるに深刻もそうじゃないもあるんですか?え?
もしかしてふたり、ちょっとの間、仲違いしてただけ?
俺は、なんだったの…
それから一転して俺は、辛く、苦しい日々を過ごした……
いつの間にか少し痩せて、周りに心配されたりもした。
失恋したんだ、って、言いふらしてた。
本人の前ではクールに振る舞うけど、人づてにニエリヒョンの耳にはいればいいと思ったんだ。
俺が苦しんでること。
そう、そうして、きっちり3ヶ月が経って。
「…ジョンヒョナ、俺たちやり直さない?」
また、突然言うヒョン。
嬉しくて飛び上がりそうになる反面、やっぱりちょっと複雑な気持ちだった。
でもとりあえずその時だけは聞きたいこと全部飲み込んで、ニエリヒョンを抱きしめた。
世界一好きな人が他のやつのものだった時間。死にそうだった時間。
そうさチェジョンヒョン、試練は終わったんだ。
俺はまたニエリヒョンにキスもできるし、俺はまたニエリヒョンのうなじに鼻をうずめることができる。
これがヒョンと恋人同士になった2度目。この時俺はまさに、"元彼"を卒業したわけだ。
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