本館
□天国への階段
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彼は死亡した時の姿だった。
彼はその時、まだ若い社会人。
希望も夢も溢れていた。
そんな彼は猫をかばいまだ寿命を使いきっていない命を落としてしまった。
「……成る程、」
死者達の生前の記録、地球上の全ての資料をかき集めた資料館が天国にはある。
10年前の死者達の資料を、“天国と地獄を統治する大王”が見ていた。
閻魔大王。
彼は様々な死者達を見てきた。
自殺した者、恨みを買われ殺された者、処刑された者、
決して幸せな死を迎えた者ばかりではない。
「……大王、それは?」
通りかかった閻魔の秘書、鬼男は閻魔の珍しく寂しげな表情に気付いた。
「善ゴメスさんの生前の資料だよ。彼は優しい人だったようだ」
「……俺もこの前それ見ました。なんで彼みたいな人が死んだんでしょう」
“死”の運命は閻魔大王にもわからない。
“生と死”を決めるのは、神でも悪魔でも閻魔大王でもない。結局は自身が決めることである。
「はぁ〜なんでかなぁ〜」
「なんだお前いきなり」
「下界は公平に出来ていないって思うんだ。大罪を犯しても処刑されなかったり、優しい人が殺されたりね。人間って解らないよ」
「確かに、人間はわからないです。なんでって感じることが多いです」
「悪ゴメスは凶悪犯なのに母親を大切にしてたとか、」
実際に下界の民として生きた頃がない閻魔と鬼男には人間の性は解らなかった。