亜双義夢(男装夢主)

□眠れない夜
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「何をしている、キサマ」


風呂上がり、挙動不審な様子の成歩堂に亜双義が背後から問いかければ、
成歩堂は浴衣に身を包んだ肩をびくりと震わせた。

部屋に入ってみれば、部屋の中央に敷かれた布団に凛が眠っている。

それを成歩堂が横から覗きこむようにして見入っていた。
……あまりにも凛と距離が近すぎる位置で。


「白川から離れろ」

ひと言短くそう言えば、成歩堂は憮然とした顔つきで首を振る。

「厭だ」

それから、くぐもった声で呟いた。

「というか……離れられない……」

その目線は相変わらず凛に注がれている。


すう、と微かな寝息を立てる凛の寝顔は静かで……とても、穏やかで
成歩堂が熱っぽい眼差しで見下ろしていても、ちっとも気付かない様子だった。

風呂上がりに身につけるよう成歩堂が差し出した浴衣には頑なに袖を通さず、
学生服姿のまま布団に横たわっている。

寝がえりを打って蹴飛ばしでもしたのか、掛け布団を投げ出してぐっすりと寝入っていた。
その滑らかな肢体が成歩堂の胸を悩ませているようだ。

長い睫毛が頬に影を落とし、睫毛の漆黒と肌の乳白色との対比が美しい。
時折悩ましい声で唸り、睫毛を震わせるたび、見ているこちらの心を揺るがすように動揺を誘う。

「…う、
 う〜ん………」

凛が眉根を寄せて、いやいやするように頭を揺らすと、なめらかな白い喉元が嫌でも目に入る。
それが鼻にかかった声とあいまって、なんだかなまめかしい。

頭を揺らす度漂う、濃厚な石鹸の香りが亜双義の鼻孔を甘くくすぐる。


吐息から熱を零すようにして、成歩堂が酔ったように呟く。

「き、きれいだ……」

ぎょっくん、と成歩堂の生唾を飲み込む音が、室内になまなましく響く。


「亜双義……なんだかよくわからないけどぼく……っ

どきどきするよ……っ!」


胸に手を当て、頬を赤らめながら、成歩堂が惚けたように小声で叫んだ。


「男なのに、どうしてだ……?」

言葉が、熱いため息とともに吐き出される。
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