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□ささやかな前戯
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「あのさあ、
今日は家に……来る?」

若干もじもじしながら言う王泥喜くんにわたしはにっこり微笑んだ。


「……いいよ」


で、ふたりで並んでゲームしてるわけなんだけど、
さっきからどうにも落ち着きがない。

王泥喜くんの様子が。
横目でチラチラわたしのことを気にしてばかりいる。

冷蔵庫からしょっちゅう飲み物を出して注いでくれたり、
お腹すかないか色々訊いてくれたり、その気遣いは嬉しいんだけど、

その「目」が、目が気になって仕方がない。


「おどろきくんさあ、
わたしの顔や身体になにかついてる?」


ついに我慢しきれなくなったわたしは、
ゲームのコントローラーを操作しながら、おどろきくんの方を見もせずそう言った。

そのとたん、王泥喜くんが操作するキャラクターが画面上でぶっ飛んだ。
わたしの操作するキャラに殴られ、蹴られ、頭にぐるぐる回るひよこマークを浮かべて目をまわしている。

その隙に必殺技を決めてK.Oにした。

おデコを指先で押さえて項垂れる王泥喜くんの、角までが垂れ下がっていて元気がない。


「どうして今日はお家デートがしたかったのかなあ?」


意地悪な口調で訊くと、王泥喜くんが明らかに狼狽した表情をその顔に浮かべた。

甘い香りのするボディバターをなじませた身体をぴったりとくっつけると
その身体が面白いぐらいにびくびく跳ねる。

「べ、べつにオレは……!」

「そんな真っ赤な顔で反論されても説得力ないなあ。
なんかつらそうだけど、大丈夫?」

「だ、だ、大丈夫!!」

「へえええ?

大丈夫なんて見栄張っちゃってさ、
……ちっともここは大丈夫そうじゃないじゃない」

どこかのエロオヤジか!?
わたしは!?

そう自分自身にツッコミをいれながらも、王泥喜くんのズボンの前を優しくさする。

明らかに気持ち良さそうな、苦しそうな、苦痛と快楽の狭間で悶え苦しんでいる様子を見て
自分の目が爛々と輝いていくのを感じた。


(どうしよう。教育を間違えたかも知れない)


わたしがエロオヤジで、王泥喜くんが女の子みたいにヨガる今の関係はさすがにマズイ気がする。


(でも最後に逆転するんなら、それでも、いいか……)


焦らして、焦らして、焦らしつつ、

言葉で散々意地悪を言って辱められていく王泥喜くんの赤い顔をたっぷりと楽しみながら、

王泥喜くんの目に熱が籠っていくのを期待して見つめ、

その「かたいこだわり」を溶かすように可愛がっていく…――


理性がどろどろにとろけて、

「もう我慢できない!!」

と襲いかかってくる瞬間が好きで、更に煽るように指先を動かし、王泥喜くんの耳元に囁いていた。
……吐息まじりの声で。

やがて訪れる歓喜の時間のためのささやかな前戯。


愉悦に苦しむ王泥喜くんの横顔を拝みながら、虐めたいのか苛められたいのか、
自分でもその境界が良くわからなくなっていくのを感じた。


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