ねこになる:立会事務官ヒロインと御剣さんの恋 ※改正前verのみ閲覧可能
□様子がおかしい(改正前ver)
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■ ■ ■
がちゃり。
と、鍵を差し込まれた音を聞きつけたのか、扉の奥から気配がする。
とたとたとたとたとたとたとたとたっ!
にゃー!
にゃあ!
鍵をまわして扉を開けた瞬間にはもう、大喜びで出迎える鳴き声が玄関に響き渡っていた。
すり、すり、とワインレッドのズボンに顔をこすりつけ、御剣を見上げるようにして、嬉しそうに、
みゃあ。
とひと鳴きする。
それが
「おかえり」
と言っているように聞こえて、御剣は破顔した。
そんなふうに聴こえた自分も、こんなふうに顔を緩めている自分も、まったく奇妙なものだ……と自覚しながらも、
御剣は長身を屈ませて、
「ただいま」
というように猫の頭を撫でてやった。
ちいさな黒猫は、御剣の大きな手に包まれて安心したのか、ゴロゴロ喉を鳴らしてうっとりと目を細める。
それをみて、御剣の顔もほころんだ。
先程、成歩堂と矢張に見せたあの表情をまたしていた。
自分がこんなに心安らかな気持ちになるなど、本当におかしなものだ……と思いながら、御剣は猫を抱きあげ部屋に入っていく。
腕の中のあたたかい感触が心地良かった。
TVをつけると、ちょうどニュースの時間だった。
猫は事件を読みあげるアナウンサーの声にぴくりと耳を立ててすぐさま、ソファに座った御剣の膝の上によじ登った。
頭を撫でてやるとまた目を細める。
御剣は今、猫と一緒に暮らしている。
雨の日の夜に拾った、この、黒猫と一緒に。
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