亜双義夢(男装夢主)

□亜双義一真の憂鬱
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* * *


「じゃあ、その亜双義の相手って誰なんだい?」


冷めてしまった牛鍋をつつきながら問いかければ、亜双義が急に箸を置き、
唸ったように呟いた。


「…………同室の、白川だ…………」


その名を口にするだけで意識してしまうのか、亜双義の顔が微かに赤らんでいる。


「え、同室って、もしやあの白川か!?」


白川 凛といえば、亜双義と同じく大学内で知らぬものはいないぐらいの有名人である。


「君はあの白川 凛と同室だったのか!?」

「……そう大きな声を出すな……」


女のように美しい顔立ち、凛としたたたずまいと、どこか品のある振舞い。
剣道の有段者であり、亜双義と一二を争う成績優秀者でもある。

唯一見当たる欠点はと言えば、身体の線が細く、成歩堂よりも背が低いことぐらいか。

肌の色も女のように白く、講義中にうっかり見惚れてしまいそうになるほどである。

どこか近寄りがたい雰囲気があって、遠目で見つめることぐらいしかできないが。


下宿先に居候する成歩堂のような生徒たちとは別に、一部の学生は寄宿舎から大学に通う。
二人一組の相部屋で、夜は畳に布団を並べて寝泊まりするのである。


真面目くさった表情を崩さず、亜双義は熱っぽい声で呟いた。


「毎晩あの寝顔を見るだけで……オレは……オレは……」


白川の寝顔でも思い出したのか、
亜双義は固く拳を握りしめながら雄叫びを発した――店内に轟くような大声で。


うおおおおおおおおおおおおおおおおお

おおおおおおおおおおおおおおおおッ!


その途端、ぼたぼたと鼻血を噴きだす亜双義一真に、
成歩堂は慌てて懐から取り出したハンケチを差し出す。


「お、おい! 亜双義、きみっ! しっかりしろよ!!」


こんなカッコ悪い亜双義は見たこともないぞ、と思いながら…――


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