亜双義夢(男装夢主)
□親友の苦悩
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「亜双義……
君、白川さんに何か嫌われる事でもしたんじゃないのか……」
名字呼び捨てではなく、白川さん、と丁寧に呼びたくなる何かを、
成歩堂は白川本人から感じた。
「わからん」
胡坐をかいた亜双義が憮然とした表情で首を横に振る。
「それが、さっぱりわからんのだ……」
顎に手を置き、窓の外の夜空を見上げながら、物思いにふけるように押し黙った。
その瞳から、色事の悩みを抱えているのが見てとれる。
親友の横顔を見つめながら、成歩堂は密かに息をつく。
頭に巻いたその赤ハチマキが、成歩堂の下宿している部屋を鮮やかに彩っているようだった。
家具は机と箪笥しかない質素な畳部屋であるのに、亜双義がそこにいるだけで絵になってしまう。
ずるいな……という、微かな嫉妬を覚えつつも、やはり憧憬という感情の方が強い。
だからこそ、親友の悩みには真剣に応えてやりたいとも思う――
――この際、相手が「同性」という問題はさておき、普通の恋愛相談に乗るつもりで話を聞いた。