novel

□君に酔う
1ページ/1ページ





「「またお前か」」

2人の声が同時に重なった

一方はカウンターに座っている死の外科医という異名を持つトラファルガー・ロー、もう一方は今、酒場に現れたユースタス・キャプテン・キッド
どちらも億越えの賞金首のルーキーである

このイカれたルーキー達のいつ勃発するか分からない喧嘩にその酒場にいる客達は皆凍りついた

その恐怖から思わず逃げ出してしまう客もいた

その様子を見て、キッドはため息をついた

「何で俺が行く酒場にはいつもお前がいるんだ?」

「俺が聞きたい、何で俺がいる酒場にはいつもお前が来るんだ?俺の事を好いているのか?」

「んなわけねーだろッ!」

「冗談だ」

ローはクスリと笑うと、ウォッカをもう1つ注文した

「座れよ、ユースタス屋」

「ちっ....」

キッドは2人分の席を空けて横に座った

ローからのウォッカをキッドは一気に飲み干すと、バンッとカウンターにグラスが割れるんじゃないかというほどの音を発てて置いた

その様子を見て、ローはまたクスリと笑った

「グラスが壊れる」

「うるせェ....」

「はっ、怖い怖い」

(....こいつ、酔ってやがるな)

キッドはいつものローと比べ、少しだけテンションが高いことに気づいた

普段のローなら、冗談も言わないし、座れとも言わない、寧ろ「帰れ」と言うだろう

「ユースタス屋、んな怖い顔してたら女も寄り付かねーぞ?」

「うるせェ、黙ってろ」

「はいはい、ユースタス屋はそれでもモテるんだっけ?」

(....めんどくせェ)

キッドはこの酔っぱらいをいちいち相手にするのも疲れ、無意識にため息をついた


「マスター、もう1つ」

ローはマスターからウォッカを受け取ると、一気にゴクゴクと飲み干した

(....おいおい、大丈夫か?)

いつもは品よく飲むローの様子から、かなり酔ってきてる事がわかった


「ゆーすらす屋ももっと飲めよぉ」

案の定、酔いが回ってきたのか、ローの言葉も覚束ない様子になってきた

そして暑くなってきたのか、ローは帽子を取り、普段よく見えない顔がよく見えるようになった

(.....エロ)

ローの顔は赤く染まり、目はうるうると涙目になっていた

ふとローと目が合い、キッドは思わずゴクリと息を飲んだ

(.....って、いやいやいや!男相手に何考えてんだ俺は.........おかしいだろ....)

「お前、飲み過ぎんなよ」

一応、キッドはローに忠告しといた

このまま飲み続ければローの部下達も困るだろうし、自分もおかしくなりそうだったからだ

「なんらよー、心配してくれてんのかぁ?ゆーすらす屋は優しいなぁー」

ローはクスクスと笑うと、キッドの隣に座り、キッドに体を預けるように寄りかかった

「お、おい」

これにはキッドも戸惑った

こんな事を男同士やっているなんて、端から見ればそっちの方だと思われるだろう

何とか離れようとローを押し退けるが、ローはキッドの腕をギュッと抱き締め、事態は悪化した

(こんなのキラー達に見られたら....)

想像しただけでも恐ろしかった

「トラファルガー、離れろ」

「んー?やらー」

「....いい加減にしろよ」

キッドは少し声のトーンを低くした

しかしローはビビる事なく、頭一個分高いキッドを見上げて言った

「なんらよーゆーすらす屋は俺の事嫌いなのかぁ?」

そう言うと、ローは小さい子供がいじけるようにキッドの腕に顔を押し付けた

キュン

(....キュンってなんだよ!!!!キュンって!!!!)

「別に、嫌いじゃねーけどよ....」

(いや!!!何言ってんだ俺は!!!?)

「なんらー良かったぁ」

ローはパッとキッドを見上げると嬉しそうに笑った

ドキッ

(ドキッって!....こいつ男だぞ?俺、気持ち悪っ)

自分はどうかしてる、キッドは思わず頭を抱えた


ローはキッドからパッと離れると、またマスターに酒を注文し始めた

もうさすがにまずいだろうとキッドは止めたが、ローは「まだ飲める」と聞き入れず、またゴクゴクと酒を飲み干し、更にローの酔いは悪化した

「ゆーすらす屋ぁ」

「....なんだ」

「せっくすしねー?」

「ブッ!!!!」

「あはは、ゆーすらす屋きたねぇ」

ローの発言にキッドは思わず飲んでいた酒を吹き出した

ローはその様子をおもしろそうにケラケラと笑って見ていた

(こいつ、今何て言った....!?)

キッドはローの発言に戸惑っていると、ローはニヤリと笑い、誘惑するように片手でキッドの内腿を擦り始めた

「....っ!?」

「おれ、ゆーすらす屋になら、だかれてもいい」

ローはキッドを上目遣いで見つめた

「じょ、冗談は止めろ」

酒のせいで赤くなっている顔と涙目が妙に行為を行っているような顔つきに見えて、キッドは思わず目を背けた

「おれはほんきー」

ローはキッドの彼処を触るか触らないかギリギリの所を擦り始めた

「や、やめろ」

「ゆーすらす屋のさわりたーい」

「....っ」

キッドは自分のが疼いているのに気づいた

(....男に反応してんじゃねーよ....)

もう自分が情けなくてしょうがなかった

ローはキッドのが反応しているのに気づくと口角をあげて誘惑するように見つめた

「さわってほしい?」

「っ、ふざけるな」

それでもやはり、キッドの理性は何とか保たれていた

「ふーん」

(これ以上はやべェ....)

キッドはもう自分の理性がギリギリである事に気づき、席から立ち上がろうとした

「ゆーすらす屋ぁ」

しかし、それはローに腕を掴まれ阻止された

そしてローはキッドの耳に吐息がかかるほど近づき、






「....すき」


そう一言言った

キッドはその瞬間、プチッと何かが弾ける音がし、ローの唇を噛みつくように奪った


「ん........ふっ....」

ローの半開きだった唇に舌を捩じ込み、何度も角度を変えて舌を追い、絡めさせた

ローから漏れる吐息に更にキッドは激しく、深くした



「んん......っあ....」

「っ!」

ローの甘い声にキッドは覚醒するように理性を取り戻した

途端、ローを放すとローは崩れ落ちるようにキッドに寄りかかった

キッドはローを支えると、後悔の嵐に襲われた

(何やってんだ俺はァ!!!??まさか男にキスなんざするなんて....)

周りの客達からの目線もかなり痛いものになっていた

出来ることならここから早く逃げ出したかった

キッドは恐る恐るピクリとも動かないローを見下ろした

ローはキッドの胸板に顔を押し付けており、表情までは見えなかったが耳まで真っ赤になっていた

「....トラファルガー?」

キッドはもう居たたまれなくなり、恐る恐るローに声をかけた

「......................」

「.............おい」

「........ユースタス屋」

キッドはローの声色からローはもう酔いが覚めている事に気づいた

ローはキッドから俯いたまま離れた


そして

ゴツッ!!!

ローは思いっきり、キッドの頬に拳をぶつけた

「いったァ!!!?」

予想もしてなかったことに、キッドは思わず声を上げた

「てっめ!何しやがるッ!」

「うるせェ!」

ローはキッドにそう一言言うと、帽子と刀を持って走って酒場から出て行った

突然の事にキッドは殴られた頬を擦りながら呆然とした

周りの客達やマスターまでもが、キッドを白い目で見つめていた

(いや、何で俺が悪いみたいになってんだ!誘惑してきたのは明らかにあっちだろッ!)

キッドは客達の目線に耐えられなくなり、早々に酒場から出て行った

勿論、ローの分の支払いを済ませてから









End

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ