悪魔に魅入られた女神(仮題)
□プロローグ
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しとしとと春雨が降り注ぐ休日。
駅前の雑貨屋を出たわたしは公園でクレープを食べていた。
早かった今年の桜は既に殆どが地に散っている。
今日の雨できっと僅かに残った花弁も散ってしまうだろう。
わたしは雨の日が嫌いじゃない。
いつも賑やかでせわしない街が、雨だというだけで静かで落ち着いたどこかミステリアスな雰囲気になる。
現にこの公園も、今は誰もいない。
「…さて、そろそろ帰ろうかな」
クレープの包み紙を空き缶やらペットボトルで溢れたゴミ箱に無理矢理突っ込んで噴水沿いに出口を目指す。
この噴水は言わずと知れたデートスポットだ。
晴れの休日なんかは中高生のカップルで溢れてる。
何でもこの噴水で愛を確かめると永遠のものになるらしい。
わたしには全く縁のないことだが、聞いてもないことを教えてくるのが女子高生というものだ。
ヨーロッパ風の石造り。それ以上の形容の仕方はわたしにはできない。
いつもは青々とした水を出すこの噴水も、今日は雨で少し濁っている。
思わず足を止めて噴水を眺める。
そして何気なく下の方に視線を移すと、ホームレスにしては小綺麗な成りの人が地面に足を投げ出すようにして俯いて座っていた……。