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□ゆめの夢
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「決まっているじゃないか」
彼は芝居がかった仕草で手を自らの腰の後ろに回し、一冊の小さな、分厚いノートを掴んで私に示した。
「きみがいつのまにか見捨ててしまった、彼らのことだよ」
そのノートの表紙のウサギに、見覚えがあった。
「それは……」
目を見開く私を余所に、彼はすっと表紙に指を走らせた。
途端、忙しない騒音が前方のテレビが響き始めた。
色とりどりの衣装に身を包んだ、まだ幼い少女たち。華やかで美しい魔法で悪者と闘っている。
悪者が息絶えた所で、ぱっと場面が変わった。
ライフルのような細身の銃を抱えた傷だらけの少年が、金色の髪をした美しい少女の手首を掴んで走っている。
黒幕らしき男がライフルで撃ち殺され、そして、また雰囲気ががらりと変わる。
そんな風にして、くるくるとテレビの中の主役たちは入れ替わっていった。
すべての登場人物に既視感があった。
途中から私は気づいていた。
私は、彼らの――。
ガガッ、と、頭上のスピーカーからノイズが聞こえた。
「きみは、本当に忘れてしまった
のかい?」
みずみずしい声が聞こえた。男性のものであるのには変わりないが、先ほどよりも
随分と若い。
見ると、男の体つきは幾分華奢になり、慎重もわずかに縮んで見えた。
――若返っている……?
いぶかしみながら男を見つめたとき、スピーカーから幼い女の子の声が聞こえてはっとした。