短編集。
□二人。
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「ねー、そろそろヤろうよ」
付き合い始めて、二か月。急に、湊(ミナト)が言った。
「はあ?」
俺、叶(カノウ)は驚いて、素っ頓狂な声を上げる。無理もない。
俺は未だ、キスもまともにできないのだ。
相手を見るとなんだか恥ずかしくて、上手くできない。それに関して、湊に何回も怒られたのを覚えている。
もっと角度を考えろとか、眼を瞑れとか、そのほかにも。
なのに、何故、今そんなことを言い出すのか。
「なんかさー、俺のホモ友達がさー、恋人とヤったって五月蠅いの。だからさ、俺らもヤってそいつにぎゃふんと言わせたいわけよ」
嗚呼、只の張り合いか。
何故、それに俺を巻き込むのか、解せない…。
「だからさ、ね?いいでしょ、そろそろ」
じりじりと近づいてくる相手。
俺はまた流されるんだろうなあ…。
惚れた弱みってやつだ。
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