短編集。

□代わり。
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夕方。
通夜があるのは夜からだから、何処かへ出掛けてきたらどうかしら…、気分も晴れるわよ?
叔母さんの電話を切った後にもう一度掛かってきた叔母さんの電話を無視したら、留守電で流れてきた言葉だ。
通夜…?一体誰の。
その答えを探すのは嫌で、叔母さんの言う通り外を徘徊して見ることにした。
宛もなく歩く道。
小さい子供が俺の横を通りすぎて行く。楽しそうに。
そういえば、此処等に公園があったな。よく、ベンチに座って、彼奴と話したっけ。
毎回二人で来てた筈なのに、何で、今日は一人なんだっけ。
その答えも何だか出したくなくて。



「帰ろう」



そう呟いた矢先、ドンッと前に何かぶつかる。
立っていたのは4、5歳程の子供で。
どうやら、遊んでいる途中、俺にぶつかったらしい。
子供の右膝から血が出ている。怪我をしたらしい。



「ご、ごめんなさーい」



そう駆け寄って来たのは、親で。
子供は、少しばかりぽかんとしていたが、ぶつかったということと、怪我をしたということを理解し、泣き始める。
親は、何度か俺に頭を下げると、子供をあやす。
でも、一向に泣き止む気配は無くて。
こんなとき、彼奴なら、意図も簡単に子供を笑わせてやれただろう。
なあ、俺にはできないんだよ、んなこと。
何でお前は、俺の傍にいない?
何でお前は__………。


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