短編集。

□コスプレ。
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ルンルンでメイド服の上に可愛いふりふりのエプロンをつける湊。ちょっと待ってくれ。
お前が御手伝いやらご奉仕やらして、いいことがあったときがあったか。……まったくない。
前に一緒にレストランのバイトをしたことがあったが、あれは酷かった。
言葉使いは荒いし、皿は割るし、厨房に立たせたら立たせたで料理を焦がしたり、ダメにしたり。
いいとこと言えば顔ぐらいで。
その時の店長さんはイケメン好きだったから、退職金を出すときにすっごく惜し気にしてたけど。
此奴は本当に家事がだめだ。



「ちょ、待って、湊。別に御手伝いとか要らないから!俺、一人でできるし…」



「え?何々ー、遠慮しなくていいんだよ?俺は叶の為にやってあげるんだから。叶は寛いでて!」



寛げるわけない!湊が台所に立っているのを見ている限り、俺は絶対に寛がない!
止めようと声をかけようとするも、やる気満々の湊を見ているとその言葉すらも出てこなくて。
糞、何でだ!何でこんなに可愛いんだ!
いつの間にか俺の手は携帯のカメラモードで相手の姿を撮っていた。何やってんだ!俺!



「え、何、叶ー。俺の姿に惚れ直しちゃった?」



くるりとその場で回って見せる湊。
「うん」とそう言いたいところだけど。でも、今はそんなこと言っている暇もない、こんなことやってる暇もない!
その筈なのに、手が、口が勝手に動く。



「うん!すっごい可愛い!」



湊は更に目を輝かせ、「嬉しい!じゃあこれから叶の為にお家の御手伝いするね!」と言う。
あーあ、………もっとやる気にさせちゃったじゃん。……誰が悪いの。
…俺です。


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