短編集。

□狗。
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「ん…、う、かな、と様あ…」



「何を綻んだ顔をしているんだ。此れは罰だぞ?」



仕事が早く終わり、連絡して迎えを待ったのだが何時まで経っても迎えが来なかった。
事故でも起きたのか、と少しばかり不安になるも俺は其処で待っていた。
15分程経った頃にやっと迎えがきて「何かあったのか」と訊くと答えずらそうに言葉を溜めた後、「仕事が終わらなくて」と目を反らしながら言われる。
腹が立った。
俺が心配までしてやったのに遅れた理由が仕事が終わらなかったなんていう答えに、無性に腹が立った。
夜、俺は奴を俺の部屋へ呼び出した。どうやら奴には特別な仕置きが必要らしい。
身体に覚えさせてやる。
身体が覚えたことは誰しも忘れることはない。

そう、思ったのだが、しかし____。



「痛…、かな、と様…っ、んぅ」



奴は綻んだ顔をするばかりで。
どれだけ殴ってもどれだけ叩いてもどれだけ犯しても。一向に苦しそうな顔をしない。
喜んでいるようにも見える。



「…何故、お前は痛がらない…!これは罰だぞ。もっと苦しめ」



「だって…、要斗様……、です、から……っ」



微笑みながら言われ、顔を歪ませた時。俺は閃く。
そうか、そうすればいい。
俺にぞっこんならば、俺を愛しているのなら、____。
もっと俺の虜にしてしまえばいい…。

そうすれば_____…………。

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