うたぷり
□死が二人を別つとも
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「…ただいま…」
そう言って、僕が春歌の元に帰ってきて、僕たちがアイドルと作曲家として過ごして…長い、長い時が過ぎた。
「…藍くん…居ますか?」
あの頃と変わらない優しい春歌の声が僕を呼んだ。
「ここに居るよ」
僕はベッドで横になる春歌のしわくちゃの手を握って答えた。
「ふふ。手…暖かいです…」
「当たり前だよ。寒くない?」
「はい。藍くんの手が暖かいので寒くないですよ」
シワのある顔を綻ばせて微笑む。春歌のその顔が今も変わらず、大好き。
自然と僕の顔も綻ぶ。
「…藍くん…。今までありがとう…。大好きです…」
春歌の瞳に涙が滲む。そして僕の大好きな笑顔を残して、一筋の涙が流れた。
ゆっくりと春歌が握る掌から力が抜けていく。
春歌の灯火が消えていく。
「…僕も大好きだよ…」
そう囁いて、春歌の頭を優しく撫でて口付けた。
人間には魂があるというが、ロボットである僕には魂があるのだろうか。
それは分からないけど、この感情というものが…どうか旅立つ春歌と共に居られますように…。
そう、祈りながら春歌に寄り添って僕はすべての機能を停止させた。
死が二人を別つとも、僕は必ず君と共にあることを誓うよ。
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