うたぷり

□お揃いも悪くない
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テレビ局を歩いていると後ろから声をかけられた。

「いよ!七海じゃん!久しぶり」

「翔くん!お久しぶりです!」

私はペコリと頭を下げた。

「お前も仕事か?」

「はい!今度、ドラマのBGMをやらせて頂ける事になって、今日は打ち合わせだったんです」

「頑張ってんじゃん!オレもさっきまでバラエティーの撮影でさ〜」

その時、翔くんの携帯が鳴った。翔くんは申し訳なさそうに電話に出た。翔くんの耳元で可愛らしいピヨちゃんのストラップが揺れた。あれは確か、四ノ宮さんが好きなキャラクターだったような…とぼんやり考えていたら、翔くんの電話は終了したようで呼び掛けられた。

「わりっ!もう終わったから」

「いえ。…翔くん、そのストラップ可愛いですね。四ノ宮さんから頂いたんですか?」

翔くんが自分から好んでピヨちゃんストラップを買うとは思えなかったので、聞いてみた。

「ん?そうなんだよ!友情のしるしつって無理やり付けられてさ。そうだ!それでお前に声かけたんだよ」

翔くんはごそごそとカバンを探る。

「ほら!これ那月から無理やり渡されたやつ。2つあるからやるよ。なんか、色によって意味が変わるとかなんとか…ちなみにこれは恋人のしるしなんだってさ。ったく、大きなお世話だよな」

藍のやつにも1つやれよって言って2つとも私にピンクのピヨちゃんストラップをくれた。

翔くんは次の現場に向かうというので、その場でわかれ、私は美風先輩のスタジオに向かった。
事前にスタジオに向かう旨をメールすると、すぐに待ってると返事があり、急いで向かった。


「いらっしゃい」

チャイムを鳴らす前に扉が開き、美風先輩が顔を出す。

「こ、こんにちは!あの、私が来たのがどうして分かったんですか?」

「窓から君が来たのが見えたから。でも予測より2分35秒遅かったね。何してたの?」

「う…すみません」

先輩に会う前に鏡で身だしなみを整えたんです…とは恥ずかしくて言えない。

「とにかく入りなよ」


私が部屋に上がると先輩がコーヒーを出してくれた。

「ありがとうございます」

「で、今日はどうしたの?確か打ち合わせがあるって言ってたよね。上手くいかなかったの?」

相変わらず直球です!

「い、いえ!打ち合わせは上手くいきました!先輩にアドバイスも頂いていきましたし、バッチリです」

「ふ〜ん。良かったね」

口の端を少し持ち上げるだけの、いつもの先輩の笑顔。

「あ、あの!今日はこれを…」

翔くんから貰ったストラップを出そうとカバンに手を伸ばすと、カバンの端に肘が当たってしまい中身が飛び出す。

「す、すみません!」

渡す前に見られたら恥ずかしいです!私は慌てて中身を拾うと、先輩も一緒に拾ってくれた。

「これ…」

私の携帯を手に取り、先に付けていたストラップを見つめる。

「ショウの携帯に付いてたのと同じだよね」

色が違うのですが、私のはピンクで翔くんのは青色なので、見ようによってはお揃いに見える事に今更気がついた。

「あの、これは…」

説明しようとしたが、手で制される。

「お揃いってやつ?どうして君とショウでお揃いなの?」

真っ直ぐな瞳に射抜かれる。

「ショウと君はそういう関係なの?」

急に顔が近づいて、更に見つめられる。私は恥ずかしくなって目を反らした。

「沈黙は肯定と取るけど、いいの?」

「ち、違います!先輩!これを!!」

さっき急いで拾ったピンクのピヨちゃんストラップを先輩の目の前に差し出す。

「青色は友情のしるしで、その…ピンクは恋人のしるし…なんです!だから、翔くんとお揃いじゃなくて…その、先輩とお揃いに…」

だんだん何を言っているのか分からなくなって、悲しくなった。

「まったく…」

先輩はため息をつきながら、私の手からストラップを受け取り、自分の携帯に付けた。
「初めからそう言えばいいのに。本当に君は鈍くさいね」

「すみません…」

「別にいいけど。これでお揃い…だね」

先輩は自分のと私の携帯を眺めて微笑んだ。

「はい!」

「恋人のしるしなんだから、無くさないでよ」

「はい!」

力んで返事をする私に、先輩は優しい笑みを作りながら、私の頭を撫でてくれた。

お揃いなんて嫌だと言われるかもと思っていましたが、笑ってくださってるので良かったです。翔くんに感謝です!








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