うたぷり
□たくさんの好きをあげる
1ページ/2ページ
ある日、現場で蕾のついた鉢植えを貰った。植物になんか興味はなかったけど、春歌にあげたら喜ぶかな、と思って持って帰った。
「これ、あげるよ」
スタジオに来ていた春歌に貰った鉢植えを渡す。
「いいんですか?」
「何の花かも、育て方とかよくわからないし」
調べれば分かるけど、女性は花を貰うと嬉しいというデータもあるし、春歌にあげたかった。
「あの、では一緒に育てませんか?」
植物も生き物だし、育てるという事を実践するのも悪くないかも…と考えていると春歌が慌てて話を続ける。
「無理にはいいんです!ただ…一緒に育てたいな…と」
最後の方は声が小さくてよく聞こえなかった。
「毎日、鉢植えの様子を見に来ること。それならいいよ」
「??」
「一緒に育ててもいいよってこと。君、本当に鈍いよね」
「すみません」
しょげさせたかった訳ではなかったんだけど、やっぱり言葉は難しい。
言葉で伝わらないなら態度で示すしかないので、ボクは春歌の身体ごと両腕で包み込んだ。
「毎日会いたいって言ってるの」
そっと耳元で囁くと、春歌の顔がみるみる赤くなっていく。
「…鉢植えがなくても、毎日、会いたいです…」
抱き合っていないと聞こえないほど小さな声で、春歌が言う。
「…ありがと」
少し照れくさくなったけど、春歌が同じ気持ちでいてくれたのが嬉しくて、額に口付ける。
「せ、先輩!?」
「なに?嫌だったの?」
首を傾げて春歌を見つめる。春歌はボクのこの顔に弱いのはリサーチ済みだ。
「う…。嬉しい…です」
「それなら良かった」
キスはしてもいいみたいだし、今度は唇に口付けた。
「…ん…」
角度を変えて、何度も唇を重ねる。初めて唇を合わせた時よりもっと深く、春歌を感じる。
「…大好きだよ…」
「…せんぱ…」
春歌の言葉を途中で塞いで、もう無理ですって春歌が根をあげるまで口づけをし続けた。
ねぇ、ボクって思ったより君が居ないと寂しいみたい。だから、君がくれる優しい時間をこれからも一緒に過ごしたい。たくさん大好きって伝えるから、ボクの側にいてよね。
.