うたぷり
□100万回の愛してるを君に
1ページ/2ページ
久しぶりの恋人と過ごす休日。
「髪よし!服よし!弁当よ〜し!」
朝から弁当作りに精を出し、独り言を盛大につぶやいて家をでた。もちろん、途中で彼女が好きなスイーツも忘れずゲット!
さて、準備は万端!愛しい彼女が待つ事務所寮へ急いで向かおう。
彼女が住む部屋のチャイムを鳴らす。何度か鳴らしたが彼女が出てくる気配はない。以前にも作曲に夢中になってチャイムに気づかなかった事があったので、そっと扉に手をかけた。
「春歌ちゃん?嶺ちゃんだよ〜☆」
うん。反応なし。
仕方がないので、勝手にお邪魔してリビングに向かった。
ん?話し声?
「…るんだ…」
小さい声だが男の声がした。いけないと思いながらも、耳をそばだたせる。
「…君の唇に触れたい…」
!!!??
「ちょっ〜と待った〜!!!」
僕の彼女を口説く奴の顔をみてやろうと、勢いよく扉を開いた。
「きゃーーーーー!!!」
突然の僕の登場に驚いた春歌ちゃんの叫び声が部屋中に木霊する。
あれ?顔を赤くした彼女しかいない。今まで聞こえていた声の主はどこだ?
男の姿を探す僕の元へ何かが弧を描いて飛んできたので、すかさずキャッチした。
「…P●P…??」
手の中にあるのは間違い無く携帯ゲーム機。
「こ、寿先輩!?いらしてたのに気付かなくてすみません!!」
春歌ちゃんが赤い顔のまま駆け寄ってくる。
「春歌ちゃん!今まで男居たよね?!」
魔法使いじゃあるはまいし、今まで声がしていたのに忽然と消えるなんて有り得ない。
「??私1人でしたが…」
不思議そうな顔で僕の顔を覗き込む。不思議なのは僕の方なんだけど…。
訳がわからなくて、ふと手元のゲーム機に視線を落とした。画面には男のキャラクターと『愛してる。君の唇に触れたい』と台詞が書かれていた。
まさか今までの声の主はこれ?
確認のため○ボタンを押してみた。
『ねぇ、答えて。君が望むなら愛してるって何度でも言うよ』
「きゃー!せ、先輩!!やめてください!」
うん、どうやら間違いないみたい。さっき聞こえてた声と同じだ。とりあえず、彼女に別の男が居たんじゃなくて良かった。
ホッとしてその場にしゃがみ込む。
「先輩、大丈夫ですか?!」
「うん、大丈夫…」
僕に合わせてしゃがんだ彼女の腕を引いて抱き締めた。
「…せ、先輩…?」
君に他に男が居るんじゃないかなんて勘違いして格好悪い。ここは大人の余裕で流して知らないフリ出来たら良かったんだけど、相手の顔見てやるなんて焦って早とちりして本当情けないな。
「あ、あの…先輩?大丈夫ですか?」
耳まで赤くして、こんな僕を心配してくれる君は本当に可愛い。
「えへ☆春歌ちゃん耳まで真っ赤だよ」
自分の情けない顔を知られたくなくて、抱き締めていた腕を離してアイドルスマイルでウィンクを1つ。
「もう!先輩!」
「もしかして、今のゲームの彼のせい?」
わざと意地悪く聞いてみる。僕以外にあんな事言われてる君を見たくないんだ。例えゲームの中の男でも許せない。君に愛してるって言えるのは僕だけでいたい。
「ち、違います!あのゲームは今度の仕事関係のもので…」
そんな大人気ない嫉妬心にも気付かずに僕の質問に必死に否定する彼女が可愛くて愛しくて、もう一度抱き締めた。
「うん…ごめん」
ゲームのキャラクターに嫉妬する程に君が好きで仕方ないんだ。歌や芝居だとクサい台詞だって簡単に言えるのに、君を目の前にすると好きで愛しくて格好いい台詞なんか全然出てこなくなるんだ。
「ははっ、本当僕ちんって格好悪いなぁ…」
ポツリと本音が漏れる。
「先輩は格好悪くなんかないです!いつでもキラキラしてて、アイドルとして歌も演技も手を抜かなくて、そんな先輩を尊敬してます!…そんな先輩が…大好きです…」
普段は大人しくて自己主張も控えめなのに、こんな時はハッキリと言えちゃうんだね。
「僕も好きだよ…マイガール」
照れて笑う君が最高にキレイでもっと見たくなる。
「ねぇ?あんな台詞を言われたい?」
「…え?それは、その…お、女の子としては嬉しいと言いますか…」
おずおずと照れくさそうに答える彼女が可愛くて、耳元に唇を寄せて囁く。
「…春歌ちゃんが望むなら何度でも愛してるって言うよ?」
あのゲームと同じ台詞。
案の定顔を真っ赤にして俯く。
「ねぇ、ちゃんと僕を見て、マイガール。…春歌、愛してるよ」
赤い顔をした彼女の両頬を包んでキスをした。
「…んっ…」
「…っ、…はぁ…愛してる…そんな言葉じゃ足りないくらい君が好きだよ…」
「…先輩…私も…んっ…」
キスの合間に何度も愛してると囁く。何度も、何度も口づけて僕が君で満たされるまで求め続けた。
どれだけ、君に愛してるって伝えたら僕は満足出来るんだろう。今はまだ全然伝えたりない。そうだな、まずは100万回愛してるって伝えてみようかな♪
.